「パッケージングされた人生 パラサイト壁の中の家族」秘顔 ひがん レントさんの映画レビュー(感想・評価)
パッケージングされた人生 パラサイト壁の中の家族
本作の登場人物三人の中で最終的に勝利してすべてを手にしたのは誰だろう。マエストロの地位とスポンサーを手に入れたソンジンか、それとも監禁はされたが何とか救出され夫を取り返せたスヨンか、それともスヨンから夫を奪い取ろうとしたミジュか。
結論を言えばミジュだと思う。彼女はスヨンの結婚を機に捨てられる。スヨンはレズビアンだけどパッケージングされた人生を送るために相手として申し分のないソンジンと結婚する。裏切られたミジュはスヨンに復讐する。
映画ラストでミジュは逆に監禁されてまるでペットのようにあの隠し部屋で飼われている。一見するとスヨンがミジュに勝利してすべてを手に入れたかに見えるけど、一度失いかけたスヨンの自分への愛を取り戻したのはミジュだ。
スヨンのペットとして自分の性感帯の開発に利用しただけだとスヨンから言われてショックを受けたミジュ。そしてスヨンへの復讐のためにソンジンと寝る姿をあえてスヨンに見せた。
スヨンが見ていて辛かったのはソンジンがミジュを抱いてる姿ではなくてミジュがソンジンに抱かれてる姿だったのではないか。
ミジュにはもう興味がないと言い捨てて愛してるわけでもないソンジンと結婚したけど、ミジュはそんなスヨンの気持ちを振り向かせるためにあえて抱かれる姿を見せたんだろう。
そうしてミジュはスヨンに焼きもちを焼かせてスヨンを再び自分に振り向かせることに成功したんだと思う。
だからこそ作品最後のあの幸せそうな笑顔に納得できる。すべて思い通りに事を運んだのはミジュだったということ。
本当ならミジュがスヨンに復讐してあのまま監禁状態で終わっていてもよかった。その方がより恐怖感も増すし。だから最後の終わり方は蛇足かなと思ってたけど、最終的にミジュがスヨンの自分への愛を取り戻すことができてあの幸せそうな表情からあの終わり方にも納得できた。まさにペットとして愛する人に飼われたいという倒錯的な愛のカタチを描いたんだと思う。ミジュの部屋のハムスターがわかりやすい。
本作はとにかくキャスティングが素晴らしい。スヨンを演じたのがあのパラサイトの奥さん役のチョ・ヨジョンさんだとは最後まで気づかなかった。パラサイト見たときは黒木瞳さんのイメージだったのが今回はまるで鳥居みゆきさんにしか見えない。メイクのせいもあるんだろうけど本当に同一人物なんだろうか。
ソンジン役の人も非の打ち所の無いイケメンだけど、やはり何と言ってもミジュを演じたパク・ジヒョンさん。韓国の女優さんでこんな魅力的な人がまだいたとは。確か「コンジアム」は鑑賞してたけど気づかなかったな。本作は彼女にすべてもっていかれてしまった。
一見薄幸そうで守ってあげたいキャラ、かわいらしくて清純な雰囲気。でも実はその顔の裏にはしたたかさを秘めていた。
もう彼女しかこの役を演じられる人はいないというくらい役にはまってたな。これはまた役者さん目当てで見る作品が増えそうだ。
セクシャルサスペンスとは聞いていたけど、ここまで惜しげもなく濡れ場を演じられるなんて韓国の女優さんの役者魂には恐れ入りました。日本の女優さんも見習ってほしい。北川景子さんとか吉岡里穂さんとか。まあ無理だろうけど。
本作は時間を徐々にさかのぼらせることで真相が明らかになってゆく仕掛けになっていて見ていてとてもワクワクさせられた。一体何が明らかになってゆくんだろうと観客の興味をそそる展開が見事だった。また覗き覗かれるというなんともエロチックな題材もとても興味をそそられた。
キャスティングが素晴らしくてストーリーもこれだけ面白いなんて、かなり満足にいく作品。これはリピート決定かな、下心込みで。
豪邸が舞台でシェルターの様な隠し部屋もあり、おまけにチョ・ヨジョンさんも出ていてどうしても「パラサイト」を作り手は意識してるように感じる。
庶民の出のソンジンと富裕層のスヨンとその母親との関係性。スヨンの母親は何かとソンジンを無意識に見下していてソンジンもそれを感じている。でもソンジンも彼ら富裕層を利用しようとしている。パラサイトの家族のように。スヨンを本気で愛してはいないだろうし、この夫婦は仮面夫婦だ。ソンジンは自分の地位を手に入れて満足だし、スヨンもミジュという恋人がいる。ソンジンもスヨンとミジュの関係を黙認してるんだろう。
人からどう見られるかを重視したパッケージングされた人生。真の顔は奥に隠して生活を続ける彼ら。まさにタイトルのHidden Face(秘顔)、それを維持するために彼らはこれからもこの生活を続けていくんだろう。
とすれば本作ですべてを手に入れて勝利したのはこの三人全員ということだな。これぞ三者がすべて満足のいく「三方よし」だな。
この作品を鑑賞した日はチョイスした作品すべてが韓国映画だったけど、四本見てすべてハイレベルな作品だった。あらためて韓国映画の底堅さに驚かされた。
オリジナル作品は配信で見れないのでついついアマゾンでレンタル落ちDVDをポチってしまった。
今晩は。コメント有難うございます。
いやあ、お恥ずかしい。けれども、今作は先週観た映画の中では、「脱走」を観た後だったのですが、更に面白くって引き込まれましたね。ナントなーく、途中で流れが読めたのですが、そこは”読めないふりをして”見るのが私の映画の観方でして。
あとはヤッパリ、全く知らなかったミジュを演じたパク・ジヒョンさんの清楚な姿からの、ゴックンシーンでした。ビックリ!最近、つくづく韓国映画の力量の凄さには参っているNOBUでした。ではでは。
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