劇場公開日 2025年5月30日

「なんだかんだで、いい夫婦」劇場版 それでも俺は、妻としたい sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5なんだかんだで、いい夫婦

2025年6月21日
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鑑賞方法:映画館

脚本も務める足立紳監督が、「事実に基づく」とわざわざ断った上で描いた、自分たち夫婦や家族をモデルにした物語。

「ぁ痛たた、見てらんねえ…」とか「よくぶっちゃけたなぁ」という思いと、「それもこれも、ちゃんと結果が出せたからこそ、こうして描けるようになったんだ」という謎の感慨深さで、妙なカタルシスを感じる一作だった。

MEGUMIと風間俊介がとてもいい塩梅。個人的には、吉岡睦雄が絶妙なところで活躍していただけでテンションが上がったが、熊谷真美もナイス。

<ここから内容に触れますので、鑑賞後の方のみお読みください>

MEGUMIの言うことは、無茶苦茶に見えつつも、ちゃんと芯を食っているからこそウッとなる訳だし、風間俊介も可哀想な存在に見えつつも、わかった上で甘えてる情けなさがどうしようもなくモヤモヤと迫ってくる。

MEGUMIの言うことの説得力は、発達障害がある息子への対応の確かさからも生まれている。
それに対して、風間俊介演じる父は、父としてはいい父だし、愛情ある父親だと思うが、息子の特性への関心の向け方のいい加減さは、再現ドラマのための取材へのいい加減さにもつながる。
そもそも彼は、そういう医療系の話が不得意なんだろう。でも、そこにやっぱりちょっと妻や生活状況への甘えが乗っかっていて、あの情けなさが続いてしまうのだが、それは、結局彼は困ってなかったということなのだと思う。なんだかんだ言って、妻は出て行かないし、自分のグチを聞いてくれるママ友たちもいるのだから。

その風間俊介が、立ち直るきっかけになったのが、漫才オーディションと、その後のMEGUMIの独白。
依存症からの立ち直りは、自分がしたことの責任は自分で負うことと、底つき体験が大事と聞くが、この映画の展開にも当てはまる。

まだその時点では結果を出せていないエンドロール後のシーンにも、「(後々)結果を出せて、本当によかったね」と声をかけたくなったし、彼の出世作になった「百円の恋」の安藤サクラって、足立紳本人が投影されていたんだと思ったら、観ながらちょっとグッときてしまった。

なんだかんだで、いい向き合い方をしている夫婦だなぁと思った。

sow_miya