「選ばれなかった"ふたり"が主役になる。優しさの卒業編」映画 すみっコぐらし 空の王国とふたりのコ こひくきさんの映画レビュー(感想・評価)
選ばれなかった"ふたり"が主役になる。優しさの卒業編
『すみっコぐらし』の映画シリーズは、かわいい見た目とは裏腹に、一貫して「生きづらさ」を真正面から描いてきました。第1作は「居場所はどこにあるのか」、第2作は「大切だからこそ手放す別れ」、第3作は「役に立たなくても存在していい」というメッセージを提示し、傷ついた側に寄り添い続けてきた作品群です。
4作目となる本作『空の王国とふたりのコ』は、その流れを引き継ぎつつ、物語を次の段階へと進めました。“居場所を見つけ、別れを経験し、無力さを受け入れたその先で、人はどう生き方を選ぶのか”。本作が投げかける問いは、これまで以上に現実的で重いです。
タイトルにある「ふたりのコ」は、一見すると空の王国の「おうじ」と「おつき」を指しているように思えます。しかし物語の核心に立つのは、「えびふらいのしっぽ」と「とんかつ」。期待に応えられなかった存在と、そもそも期待されなかった存在。異なるかたちで“選ばれなかった側”にいるこのふたりを主軸に据えることで、本作は「役割とは誰が決めるものなのか」「使命は与えられるものなのか」という問いを浮かび上がらせました。
一方で「おうじ」は、万能なヒーローになるわけでも、すべてを自分で解決する存在でもありません。彼が学ぶのは、何でも自分で背負うことではなく、周囲の助けを借りながら責任を引き受ける姿勢。その変化は派手ではないが、極めて現代的で誠実に描かれています。
空の王国の水不足は、単なるトラブルではなく、考えることをやめ、誰かに委ね続けた社会の象徴として提示されています。物語は安易な救済や完全な成功を描かず、ラストには希望とも不安とも言い切れない余韻を残します。それは突き放しではなく、「どう生きるかは自分で選んでいい」という静かなメッセージでした。
『空の王国とふたりのコ』は、すみっコぐらし映画シリーズの集大成であり、同時に、観客に物語を手放すための“卒業編”のように感じました。癒やしの先に、選び続ける現実をそっと差し出す。その優しさと誠実さが、深く心に残る一作です。
こひくきさん、共感いっぱいとフォローありがとうございます。・_・
深く考察されたレビューに感服いたしました。
すみっコ劇場板4作品とも観ておりますが、基本的に
『こころのお洗濯~』のため観に行っています。
なので、私には無い着眼点のレビューに眼からウロコ
状態。素晴らしいです。・-・はい。
こちらからもフォローいたしました。
他の作品でも、機会があればよろしくお願いいたします。
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