「地方政治の本質がぬるりと見えてくる」能登デモクラシー Yuhideさんの映画レビュー(感想・評価)
地方政治の本質がぬるりと見えてくる
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石川県穴水町ののどかな風景の中で展開する、おどろくほど牧歌的な地方政治。議員は60代、70代の人がずっと居座る。議会で質問もしない。
市長と議会は、ほぼ一蓮托生。市長に反論する議員はいない。本来は二元代表制で、緊張感が必要なのに…。
そんな町で、元中学校教師・滝井元之さんが手書きの新聞「紡ぐ」を発行し、静かに町の歪みに警鐘を鳴らしていく。
現市長が関わる介護施設を前市長の土地に建設し、前市長が家賃収入を得るという露骨な利益誘導策も、議会では誰一人反対せずに可決。それを悪いと思っている人すらいない。
問い詰めれば「まぁまぁ」で済まされ、隠そうとすらしない。なんだろう、ヌルリとした感触。
滝井さんの地道な行動や本作の存在が、町にわずかな変化をもたらし、市民の声を聴こうとする動きも見えてきた。
しかし、それでも簡単には変わらない。
象徴的なのが、元役所職員が議員当選後、前市長と現市長から封筒を受け取った場面。
現市長は「ビール券だ」と言う。金銭だけではなく金券の授受と禁止。現市長は「そうなの?だめなの?」と他人事。その場にいた人が「町からです」と言い添えるが、その適当な言い訳こそが問題の本質を物語っている。
「民主主義とは何か」「ジャーナリズムとは何か」を問いかける、静かで鋭いドキュメンタリー。
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