劇場公開日 2025年5月17日

「民主主義(デモクラシー)を「生きる」ということ」能登デモクラシー スー(ジェーンじゃない方)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0民主主義(デモクラシー)を「生きる」ということ

2025年6月22日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

知的

幸せ

多くの人々は、民主主義を深く意識することなく、その恩恵を享受しているように見える。

しかし本来、社会学の視点ではこう言われる——「民主主義を支えるには、フリーライド(ただ乗り)は許されず、労力や時間というコストがかかるものだ」と。

では、そんな「手間のかかる民主主義」を実践している人は、どれだけいるだろうか?

石川県・能登半島の小さな町、穴水町に、まさにその体現者とも言える人物がいる。滝井さんという方だ。

彼は、手書きの新聞を自ら作成し、それを1軒1軒「お変わりないですか?」と声をかけながら、町の人々に配って歩く。

情報発信者であると同時に、まるで保健師のように人々の暮らしに寄り添う——そんな活動を、すべて無償で行っているのだ。

タイパ、コスパ、映え——現代において重要視されること全てが真逆である。

天才社会学者と称される故小室直樹氏は「社会が廃れれば、人が輝く」と述べたという。能登は震災があり、穴水は限界集落であるのだが、滝井さんはその言葉を地で行くような存在に思える。

頭が下がる思いとともに、ただただ尊敬の念を禁じ得ない。

この映画は、民主主義を「制度」としてではなく、「日々の営み」として生きるとはどういうことかを、私たちに突きつけてくる。

一人でも多くの人に観てほしい作品である。

スー(ジェーンじゃない方)