「タイトルなし(ネタバレ)」能登デモクラシー 何処吹く風さんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし(ネタバレ)
鑑賞する前に、映画の紹介記事を読むことはリスクを伴いますね。
つい、予断を持って、それが誤誘導に結びつくと最悪です。でも、
ある程度は調べておかないと観るか観ないかの決心がつきません。
ハイゼンベルクの不確定性原理みたいなもんッスねー。
前町長の所有する土地に現町長が理事長を兼任する介護施設を
主軸とする「多世代交流センター」を町と国に金を出させて
建設するという利益誘導型の政策が、まかり通ってしまうのは、
首長側の問題なのか議会が機能していないのか市民の眼が届いて
いないのか。そういった問題が主軸になる映画かと思っていたら、
なかなか、どうして一筋縄ではいかない深みのある作品でした。
こういう作品は、何回も見直して観たいし、五百旗頭監督の
『はりぼて』や『裸のムラ』を観たくなります。
町の職員を辞職して町議会に初出馬する方の選挙活動や
開票結果を待つ陣営の様子、当選直後に前町長や現町長が
祝福する様子などが描かれるのですが、開票が始まると
同時に前町長が「当確や」と断言し「811票も取るとは
なあ。初出馬でトップ得票だ」「マスコミの当確は、我々より
遅いのよ」などと、一種、ハシャいでいる姿が映し出される
というのも、なかなかスゴイのです。実は、前町長や現町長が
初出馬の議員の当選を祝ってるシーンは、最後に現町長の
顔色を失わせることになるのですが、そういったジャーナリズムの
正義感が鋭く不正を暴くみたいな映画だろうと思い込んで
観に行ったのが予断でした。
新聞『紡ぐ』を毎月2回も発行し、自らの手で公共施設や震災後には
仮設住宅の一軒一軒に配布しながら、「困ってることはない?」と
声かけをしている滝井元之さんというスーパー80歳も、カメラは
丹念に追いかけます。滝井さんは、ソフトテニスのコーチや監督なども
していて、中学生や小学生のチームを全国大会に出場させたりしています。
そういう滝井さんを震災後には現町長とタッグを組むかのように手を
携えて穴水町のビジョンを描こうとする姿も映し出されるのですが、
予断を持ったままだとシニカルに見てしまう、このシーンや、あるいは
町議会で質問する議員が発言の最後に「答弁には及びません」と付け加える
奇異さも、五百旗頭監督は、ある舞台挨拶で 「穴水には分断がない」と
表現したというんですね。その視点で、この映画を鑑賞したら、まるで
違う風景が開けてきます。。
この映画を観ていて私が一番ニンマリとしたのは、五百旗頭監督も
馳知事のことをバカにしてるか、少なくとも嫌いなんだあと思える
ショットが、いくつもあったことでした。
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