劇場公開日 2025年11月28日

「「夫婦は一番近い他人」」佐藤さんと佐藤さん かなさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 「夫婦は一番近い他人」

2025年12月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

 夫婦が働いて収入を得るという生活の基盤を描出している。夫が働き妻は専業主婦、夫が働き妻はパート等で働き補助収入を得るが家事・子育ての主は妻、夫も妻も働き収入を得て、家事・子育てもバランスよく二人でおこなう。このような夫婦の在り方が社会通念のようになっている。

 夫は司法試験合格を目指し日々勉強し、妻も働きフォローする、二人は社会通念とマッチしていた。しかし夫が目指していた司法試験に妻が合格し、妻が働き夫は補助収入を得るが、家事・育児も夫が主でおこなっている。夫は愚痴もこぼさず家事をおこなうがどこかに男のプライドが隠れている。夫と妻の何気ない日常の言葉遣いや態度によって、夫婦感に小さな穴が開いていく展開の脚本の見事さ、天野監督の丁寧な演出、宮沢氷魚、岸井ゆきのの繊細な演技をとおして、映画は社会通念をひっくり返したのだ。

 働いている妻が何気なく「トイレットペーパーないよ」という一言。夫は「僕に買ってこいということか」と口論になる。この一言で夫の心が乱れる繊細さがうまい。弁護士として忙しく働く妻をフォローしつつも、どこかに羨望の眼差しを妻に向ける夫。勉強したいが子育てで疲れ切って寝てしまうもどかしさ。いっそのこと田舎に帰って別の仕事をするか、悩む夫の姿が痛々しい。夫の気持ちの変化にまったく気づかない妻。小さな穴が時間をかけて徐々に修復不能になるほど大きくなる。

 同じ家で生活し一番近い夫婦という関係。近いから相手のことを何もかも理解しているかといえばそう簡単ではない。お互いが何を一番大事にしているか、それぞれ違うからだ。

 結婚して50年の夫が妻から離婚を迫られるシーンはまさに夫が抱く社会通念上、寝耳に水であろう。しかし妻はまったく違った感覚しか持っていなかった。夫婦の関係性を描出するなかでこの挿話は非常に重たいものを弁護士の妻に突き付けた。

 ラストシーンで岸井ゆきのが涙するシーンには胸がつまった。どこで間違えたのかという後悔の念が表情ににじみでている。夫婦は一番近い他人なのだ。

かな
uzさんのコメント
2025年12月4日

紗千の失言、というか言葉の綾は、瞬間的に「あっ!」となるくらい理解できる。
でも、自分が保なら絶対に指摘できません。
どちらも“男のプライド”ですが、紗千が気付いて意識するタイプなら、その方がストレスはないかも。

uz
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