「いい映画です。ところで来年から離婚時には共同親権も選択できるようになる。」佐藤さんと佐藤さん あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
いい映画です。ところで来年から離婚時には共同親権も選択できるようになる。
岸井ゆきのはこの映画についてのインタビューで「サチとして、タモツいろんなことに気づいてあげられなくてごめん」と思ったといっている。また「結婚しているか否か、恋人がいるか否か、そして女性か男性かによって、十人十色の感想がある」ともいっている。スライス・オブ・ライフの極み、一つの夫婦の出会いから離婚までを観察日記として追いかけた作品であり、観る人の体験や人生、結婚観によって印象は確かに大きく変わるかもしれない。
この映画は、サチってなんか嫌いとかタモツ理屈っぽすぎる、といった好き嫌いだけで観るのではなく、お互いの立場や感情を受けいれようともがき続ける者たちの物語として受け取ってほしいものだと思う。
確かに、二人とも苗字が佐藤であるため、名前の問題という日本独特の結婚時の悩みはクリアされている。また二人とも法律を学び、法律を職業にしようとする者たちであるので、夫婦喧嘩をするにしても理性的である。最初と最後に出てくる中島歩が演じる典型的なモラハラ野郎や、ベンガルが演じている奥さんに愛想をつかされたダメ亭主とは人間性、人権意識がまるで異なる。でも私は配偶者にひどい目にあわされた、こんな現実離れしたお話なんてと一刀両断するのではなく、夫婦で最も大事なのは常に相手に立場を考え、できる限り誠実であろうと努力し続けることだとこの作品はわかりやすく例を示しているのであると受け止めて欲しい。
そう、エンパシーと修正力なのである。結婚は。この二人の場合はエンパシーは十分だがそれぞれの立場や主義があり修正が働かなかったということだと思う。
でも世間にはそもそもエンパシー自体が欠如しているもの、誤ったジェンダー意識によってエンパシーが正しく機能しないものも多く存在するが。
そうそう、最後のシーンでは、二人はおそらく離婚して別居しており、親権はどちらが持っているか分からない。ただ、保育園への送り迎えなどは夫婦で分担していることが示される。来年四月からは改正民法が施行されて共同親権の設定が可能となる。今まで母親しか取れなかった親権が父親にも取れるようになったと誤った理解する向きもあるが(今でも父親も単独親権をとることはできる)むしろ子の監護を父母が協力して推し進める、つまり子の成育に両親のリソースをより使いやすくするためのものである。共同親権下でのサチとタモツの物語も観てみたい気がする。
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