「「それでも結婚する理由」を描いてもらいたかった」佐藤さんと佐藤さん tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
「それでも結婚する理由」を描いてもらいたかった
「夫婦」とは何なのかについて考えさせられた。
序盤で描かれる、コーヒーの選び方は違っても、自転車で並走しながら同じ歌を口ずさむカップルの様子からは、正反対の性格ながら、どこか気が合って、一緒にいると楽しいという2人の関係性がよく分かる。
やがて、夫に先駆けて妻の方が司法試験に合格してしまい、妻の妊娠を期に2人は結婚することになるのだが、この時点で、彼らの間には、不穏な空気が流れ始めている。
妻が弁護士として活躍する一方で、子育てをしながら受験勉強を続ける夫が、プライドを傷つけられ、ひがみっぽくなることも理解できるし、そんな彼を気遣いながらも、仕事を優先せざるを得ない妻の立場もよく分かる。
もし、妻と夫が逆の立場だったなら、2人の関係はこじれなかったのかもしれないが、そうした考え方をする自分自身が、「男は家族を養うべき」という固定観念に支配されていることに気がついて、何だか反省してしまった。
その一方で、夫よりも妻の方が社会的地位や年収の高い、所謂「逆転夫婦」は、いくらでも存在するし、夢の実現に向かって「下積み」を続ける夫のことを、妻が支えている夫婦だって沢山ある訳で、そのような男女の関係性が「健全ではない」とはとても思えない。
そういう意味では、主人公の夫婦の間に亀裂が生じたのは、必ずしも彼らが置かれている社会的な立場のせいではなく、あくまでも、2人の性格や価値観によるものだと思えるのである。
冒頭で、弁護士の妻の同僚が、クライアントの離婚の手続きを進める中で、「こんなにもめるのなら、はじめから結婚しなければよかったのに」と呟く台詞を聞いて、この作品は、「それでも結婚する理由」を描くのだとばかり思っていた。
だから、どんなに2人の関係がギクシャクしても、最後は元の鞘に収まるに違いないと予想していたのだが、それを覆すエンディングには驚いたし、3か月ごとの子育て契約のようなものから、「新しい夫婦の形」を感じ取ることも難しかった。
劇中の離婚調停における夫と妻の言い分を聞くにつけ、「結局、夫婦は分かり合えない」といった、身も蓋もない主張しか感じられなかったのは残念としか言いようがなく、もっと「喜びは2倍、悲しみは2分の1」みたいな、結婚(夫婦になること)に希望が持てるようメッセージを打ち出せなかったものかと思えてならなかった。
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