「ロマンスのせいでフルブレーキング(長文)」映画「F1(R) エフワン」 きーろさんの映画レビュー(感想・評価)
ロマンスのせいでフルブレーキング(長文)
さすが、んなわけねぇよの代表作【トップガン・マーベリック】ジョセフ・コシンスキーが紡ぐ現代のおじさん向けご都合主義のフェアリーテイル。まだ少しだけお金を持っている団塊ジュニア以降の“ガノタ層”に全ベットしたAppleのマーケティングか?という疑念がよぎったけど──そんなことお構いなしにラストまでグイグイ引っ張る勢いには感服。
とにかく最初から最後までブラッド・ピット劇場で、何やっても、幾つになっても、ブラピはブラピ。これ、幾つになってもキムタクがキムタクなのと同じじゃん?と思ったら、キムタクがずっとブラピに憧れてトレースしてきたって考えると、なんか納得。マーロン・ブランドからクラーク・ゲーブルに受け継がれてきた「何やっても俺」は大スターの証なんだよね。
で、この映画、リバティ・メディアがバーニー・エクレストンの作り上げた「F1は貴族のスポーツ」のイメージから「ホワイトトラッシュもイケる平民のエンタメ」に変えた縮図そのもの。
日本でのF1人気が頂点だったセナ・プロ時代のアメリカでは見向きもされなかったのに、今や全米ファン数7200万人、ラスベガスGPで15億ドル経済効果を生み出した、Netflixの大人気ドキュメンタリー「Drive to Survive」風のベタベタのナラティブでガッチリ掴んでカッ飛んでいく感じを上手に踏襲してる。畳み掛けるように見せ場を繋ぐこの語り口は、F1の“今と昔”の決定的な違いである「サドンデス予選」を一切描かない選択にも現れていて、詳しいマニアはお呼びでない!の潔さがある一方で、ちょっとした誤解も生みそう。
でもって、わかりやすさ重視の才能溢れるルーキーとのバチバチ師弟ドラマは深みゼロの胸熱展開だけど、エンジニアとのロマンスは本当に必要ないし心の中で、やめてー!いらん!いらんって!って2人きりになるシーンで何度も叫んだよね。これって外野の「映画には恋愛要素を入れなきゃ」圧に負けたのか、はたまた監督の趣味なのか?
実際は上位チーム以外全く活躍できず決勝の順位も予選とあまり変わらないくらい単調な今のF1をWWEみたいな人間ドラマ全開で、ブンブンのEDMと懐ロックを絡ませてコンチネンタルサーキットのお祭り騒ぎ感だけで仕上げた本作品、実在のチームやドライバー、関係者までちょいちょい出てくるから映画の世界と現実とが混ざり合ってアタマ混乱するけど、IMAXエンハンストなレースシーンはとにかく迫力満点で体もめちゃ動いた。
た〜だぁ〜!
少しでも知識があればオールドルーキーが加入しただけで最下位チームがジャイアントキリングを連発するなんて土台無理な話だってわかってるだけに、どうしても展開全てがおとぎ話に見えちゃうんだよなあ…。ああ!これもまた、メイク・アメリカ・グレート・アゲインか!?それとも日本のなろう小説の悪影響か!?
とはいえ今のアメリカのF1人気は本物らしいし、来年はチームキャデラックが参戦するし、これでアメリカ人ドライバーが活躍したら空前のF1ブームが来ると思うし、それこそがリバティメディアの思う壺ってもん。日本でもRB角田が実際にフル参戦している今、あの頃みたいに、F1の話題が月曜のランチで飛び交うようになったら、このフェアリーテイルもほんのちょっと“現実”に近づくかもしれない。
それではハバナイスムービー!
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