劇場公開日 2025年6月27日

「レースシーンの迫力は現時点で最高峰の一つと断定できる一作」映画「F1(R) エフワン」 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 レースシーンの迫力は現時点で最高峰の一つと断定できる一作

2025年7月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

本作は何をおいてもひとまずF1の迫力を体感するための映画で、その目論見は見事に当たっています。

『ナポレオン』(2023)、『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』(2023)、『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』(2024)と、大作、話題作を次々と送り出しているAppleだけど、興行的にはいまいち…、ということで「観客を楽しませる、興奮させる」ことに全振りした格好となった本作。資金力にものを言わせてキャスト、スタッフは一流どころを揃えるわ、F1の全面協力を取り付けるわで、巨大企業がエンターテイメントに本気でのめりこんだ凄み、というか怖さが実感できます。

F1はもちろん単なるスピードレースではなく、レースの展開を理解するうえで読み解くべき大小無数の要素があるんだけど、「弱小チームがどう強豪と渡り合っていくのか」という明確な目標を設定して、そこに至るまでの数々の戦術のうち、「ピットインのタイミング調整で相手を出し抜く」に絞り込んで見せたことで、F1初心者にも勝利に至る論理が分かりやすくなっていました。予選を割愛するなど、F1のファンからすると不満なところもいろいろあると思うけど、これだけレースの楽しさを分かりやすく、そして率直に実感させることに注力してくれたことはすごいの一言です。

ブラッド・ピットは『ブレット・トレイン』(2022)で開眼したのか、今回も「年寄り扱いを笑って受け流しつつ若造にカウンターを喰らわせる、にやついた一匹狼」という人物像を楽しそうに演じており、まあこの役があてはまるのは現状彼しかいないよね、と妙に納得させられたのでした。

yui