「高齢化社会を反映してヒーローものもおじさん方向に拡大中 王道イケオジ•ヒーローものにドンピシャな永遠のやんちゃ坊主ブラッド•ピット」映画「F1(R) エフワン」 Freddie3vさんの映画レビュー(感想・評価)
高齢化社会を反映してヒーローものもおじさん方向に拡大中 王道イケオジ•ヒーローものにドンピシャな永遠のやんちゃ坊主ブラッド•ピット
開始数分後(数秒後?)にレッド•ツェッペリンのナンバーが…… 「お、のっけからツェッペリン。あれ、タイトルなんだっけ?」と思ってると 🎵ワナホラララ の箇所に来て「あ、”Whole Lotta Love” だったな」と思い出します。帰宅してから Spotify で探してみると、映画F1のプレイリストがあり、公式サントラ盤+α の構成になっておりました。映画に挿入されてる曲でも、さすがに上記のツェッペリンの曲やクイーンの “We Will Rock You” あたりは楽曲の権利の関係からか、公式サントラ盤には入ってないようです。公式サントラ盤の中ではエド•シーランのその名も “Drive” という曲がなかなかご機嫌なナンバーでした。でも、今回ブラッド•ピットが演じた ちょいワル•イケオジのレーシング•ドライバー ソニーのイメージにピッタリだったのは、やはり冒頭に被せてきた “Whole Lotta Love” だと思います。例の 🎵ワナホラララ ギュィーン の箇所の”ギュィーン”がレーシング•カーのイグゾースト•サウンドみたいに聞こえなくもないし、何よりも1970年代のハードロック(この曲、ツェッペリンのセカンドアルバム収録なので厳密に言うと1969年発表なんですけどね)の持つ反体制的でアウトローっぽくワイルドな感じがブラピ演じるソニーそのものです。
この映画は『トップガン マーヴェリック』のスタッフが再結集して作ったという触れ込みで、言われてみると確かにこの2作品はよく似ています。王道のヒーロー•ストーリーで主人公はとうの昔に第一線を退いていてもおかしくない年齢のおじさんで、最初は若い世代と反目しあっていたのが、やがて両者は歩みより、協力して目標を達成するというものです。でも、この2作品の主人公には決定的な違いがあります。それはマーヴェリックが将校としての出世などに目もくれず、未だ現役パイロットとして空を飛んでるとはいえ、つまるところ、世界一の軍事大国アメリカのネイビーのエリート•パイロットのなれの果てであるのに対し、こっちのソニーは若い頃にレーサーとして大きな挫折を経験した後、酒やギャンブルに溺れ、今は自分の車に寝泊まりしているホームレス、あちこちのレースに顔を出して賞金を稼いでなんとか生活している風来坊であるという点です。そんな風来坊にかつての盟友で今はF1では弱小のレーシング•チームを率いるルーベン(演: バビエル•バルデム)がウチに来ないか声をかけ、ソニーはレーサーとしてF1で走ることになります。ということで、ソニーはマーヴェリックにはなくて古今東西のヒーローたちの多くが持っていた「強きをくじき、弱きを助ける」という特長を持つことになります。
そして、彼は実際にレースで走り始めると、弱者がいかにして強者を出し抜いてゆくかを考え抜き、F1のレースを「ルールのあるケンカ」として捉えているかのごとく、反則スレスレの走りをしたり、故意に(そうとは見せずに)接触事故を起こしてみせたりします。弱者の戦法として、ルールを利用して(別の言い方だと「悪用して」)じわじわと彼が所属するレーシング•チームのF1カテゴリーでのステータスを上昇させてゆきます。ここらあたりが、強者である軍事大国アメリカが世界秩序の維持という大義名分の下、軍事力では劣ると思われる国に侵入してミッションを遂行するという「マーヴェリック」との大きな違いです。そもそもマーヴェリックでは強者側(すなわち米軍)が国際的なルールを破って勝手に他国に侵入しているわけですから、それに比べれば、F1でのルールの悪用なんてかわいいものです。
と、『トップガン マーヴェリック』のことを若干ディスり気味に書いてきたのですが、この『F1(R) エフワン』は映画の出来、面白さという点においてはマーヴェリックの後塵を拝しているように思います。というのも、ストーリーが後半、だんだん陳腐になってきて御都合主義的展開が多くなってくる感があって。こういった分野で名作とされる『ラッシュ/プライドと友情』とか『フォード vs フェラーリ』とかと比較すると、けっこう差が大きいのかなと感じました。まあ、上記2作は実話に基づいているわけで、それに対してフィクションであるこの作品は「奇跡」も自由に作り出せることが長所にも短所にもなっているのかもしれません。
まあでも、永遠のやんちゃ坊主みたいなブラッド•ピットがさすらいのちょいワル•イケオジ•ヒーローとして大活躍しましたので、それでよし、ということなのでしょう。さあ、レッド•ツェッペリンの “Whole Lotta Love” 聴くぞ(これ、邦題で『胸いっぱいの愛を』なんてロマンチックなタイトルがついてるんですけど歌詞がけっこう意味深なんです)
Want to whole lotta love……
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