劇場公開日 2025年6月27日

「大満足! いい意味で想定の斜め上を行く作品でした!」映画「F1(R) エフワン」 よしてさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5大満足! いい意味で想定の斜め上を行く作品でした!

2025年7月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

本作の存在を知ったときに、「え? ブラピがF1ドライバー?」という違和感しかありませんでした。F1ドライバーというのは超人的な肉体と精神力を求められる職業。どんなに天才であれ、還暦を超えた人間が前線で戦えるとは思えません。
劇中でも触れられていますが、還暦近いドライバーがF1で勝ったこともありますし、50近いドライバーが年間チャンピオンを取ったこともあります。しかしながら、それはF1が牧歌的だった1950年代の話。
ターボ時代を迎え、ホンダがハイテク機器を持ち込んで以降の1980年代以降のF1は、ドライバーには単なる運転技術だけではなく、世界でもトップクラスの身体能力を求められている職業の一つです。

その意味で「映画として説得力のある描写になりうるのか?」という疑問は上映が始まってからもすぐには払しょくされませんでした。

しかし、まあ、なんというのでしょう。
本作はいい意味でファンタジーでした。主人公ソニー・ヘイズは単なる速さだけで勝負するタイプのドライバーではなく、ルール違反スレスレの行為も厭わずに、万年Bクラスのだらけ切ったチームを「戦える組織」に作り上げていきます。昔のF1を知っている人間からすると、当たり前のような行為であるサーキットを走る、という行為も最初はソニーが一人で黙々とこなし、チームが出来上がるにつれて、多くの人が追従するようになっていきます。

周回遅れの車がブルーフラッグを無視して、首位争いをする車をブロックする。ある意味で映画ならではの描写ですが、オールドF1ファンならば、ルネ・アルヌーという存在を忘れておりません。
自らのプライドやチームを勝利に導くために、何でもやるドライバーは他にもいました。プロストやマンセルといったレジェンドたちも、自らの利益のために故意としか思えない接触を起こすこともありました。チームメイトのドライバーを公然と罵る世界チャンピオンもいました。

そういった手練手管を含んだ形で、ベテランドライバーがのし上がっていく姿は、冒頭の年齢への違和感などかすんでしまいます。
迫力ある映像も素晴らしい作品ですが、スーパーアスリートたちの限界ギリギリの戦いの中で描くなかで、きっちりと心理戦も含んでいることが本作の白眉なところ。

トム・クルーズが本人の超人的な努力も含めて、若手と対等に戦う姿も素晴らしかったですが、ブラッド・ピットの自らの信念は曲げず、勝つために汚いことでも何でもやるというヒーロー像は想定外で本当に素晴らしいものでした。

その意味で途中のロマンスはもう少しサラっと流してほしかったですし(ポーカーのくだりは好きです)、ラストの展開はチームメイトを勝利に導いてこそだったのでは? と思うところもないではありません。
とはいえ、最後にまた別の新天地を求めて旅立つソニーの姿には称賛を送るしかないでしょう。素晴らしい作品でした。

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よして
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