「スポ根モノの王道を征く」映画「F1(R) エフワン」 ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)
スポ根モノの王道を征く
カテゴリーは異なるのに、
〔トップガン〕のシリーズと引き比べてしまう。
片や『トム・クルーズ』は62歳、
対する『ブラッド・ピット』61歳。
共に齢六十を超えてなお、
鍛え上げた肉体を誇示し、
生身でアクションに挑む。
製作に関与するのも同様。
ただ前者が陸・海・空となんでもこなすものの、
後者は陸専門の印象
(あ、でも〔アド・アストラ(2019年)〕の宇宙はあったか。笑)。
元来は一匹狼なのに、
過去の縁のためならチームプレイに徹する情の厚さや、
後進を引き上げる自己犠牲の精神もあるのも共通。
終映後に「トップガンよりこっちの方が好きかも」との
女性の声が聞こえたのもむべなるかな。
主人公の『ソニー(ブラッド・ピット)』は元「F1」ドライバー。
1980年代後半から90年代初頭にかけ頂点を競った
『プロスト』『マンセル』『セナ』に次ぐ若手と期待されるも、
初優勝を目前の事故でキャリアを失ったとの設定。
その後はお定まりの転落コース。
が、レースの世界に見切りをつけられず、
今は雇われレーサーとして身一つで転戦、
日銭を稼ぐ日々。
そんな彼が嘗ての戦友『ルーベン(ハビエル・バルデム)』からのオファーを受け、
新生の「F1」チーム「APX」にジョインし
活躍するとの流れ。
『ソニー』のやり口は荒っぽく、
反則ギリギリのラインを突く。
勝つためなら常識に外れた手段も平然と取る。
が、その何れもが、
チームを思う強い信念と理屈に裏打ちされたもの。
根底には自らを殺しても仲間を生かすスタンスがある。
それにしても「F1」、今ではこんなことになっていたのね、と
認識を新たにする一本でもある。
元々、自動車メーカーの存亡を賭け、
最新技術の粋を注ぎ込む場。
マシンそのものにも各種センサーは埋め込まれ、
刻一刻と膨大なモニターで監視。
パーツさえ「ミニ四駆」のように嵌め込まれる。
求めるのは最高のスピードながら、
ドライバーの危険性は常に裏側に。
そのためのレギュレーションは日々更新され、
新たな変化は生まれる。
単に速さだけを競うなら、
AI全盛の時代、ロボットに運転させればよいが、
そうなるとこれだけの人気は保持できぬだろう。
あくまでも人間が超絶なテクニックで
モンスターマシンを駆ることに意義があり
そこにドラマが生まれる。
本作は王道の流れも、迫力で鳥肌が立つレースシーンの中に、
人間らしい相克を埋め込み観る者の胸を熱くさせる。
主人公は自堕落に見え、
レースに対する姿勢はストイック。
独自のジンクスもあり、
レース前には一枚のトランプをズボンのポケットに忍ばせ、
一位になっても「ツキが落ちる」と優勝カップに触れもしない。
「F1世界選手権第最終戦 アブダビGP決勝」での出来事は
彼がしてきたことへの集大成。
これで過去の憑き物が落ちるわけだが、
そこで立ち止まるわけではない。
何故ならこの世界にレースは幾つでもあるのだから。
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