劇場公開日 2025年6月27日

「圧倒的臨場感にシビれ、イケオジなブラピを愛でる」映画「F1(R) エフワン」 いたりきたりさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 圧倒的臨場感にシビれ、イケオジなブラピを愛でる

2025年6月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

未だかつて映画で味わったことのない圧倒的臨場感にシビレる。とともに、ブラピの“イケオジ”ぶりをひたすら愛でる。とにかく、この二点がすべてと言ってもいい「アトラクションムービー」、それが本作だ。

この映画は“地上版『トップガン マーヴェリック』”と喧伝されているが、他方、かつて“四輪版『トップガン』”と称された『デイズ・オブ・サンダー』(1990)の続篇がトム・クルーズによって企画進行中とも伝え聞く。これに先行する本作がいかなる映像表現をもって、どんな人間ドラマを描いてみせたのか——。

まず、オープニングからガンガン流れるロックの音圧がたまらない。サーキッドに響き渡るエンジンの爆音もハンパない。さらに息詰まるほどのスピード、ドライバーから見える視界の狭さ、マシンにかかる風圧の苛烈さなどが、視覚/聴覚を通してびんびん伝わってくる。畳みかけられるレースシーンに思わず拳を握りしめ、前のめりでIMAXスクリーンを食い入るように凝視する。実際のF1観戦経験がない自分にとって、このコーフンを何かにたとえるなら、かつて米軍横田基地で垂直離着陸するジェット戦闘機を間近に見た時の感覚が最も近いかも。

とはいえ、前夜祭パーティーで踊り浮かれる美女たち、空軍機編隊のアクロバット飛行、特観席に群がるスーパーリッチ族、シャンパンファイトに熱狂する観衆…とそれこそバブリーな描写が続くと、FOM(フォーミュラワン・マネジメント)のあざとさを見せつけられているようでもあり…。ひがみ根性の自分とは無縁な世界(笑)にやや引き気味になる。

一方、ストーリーはいたってシンプル。物語はシーズン中の全グランプリを、リアルなゲーム感覚で片っ端から見せることによって進んでいく。そこにいわゆる「人間ドラマ」は希薄だ。『カーズ/クロスロード』のドラマ展開や『炎のランナー』のセリフ(「走るとき神の喜びを感じる」)などを一瞬思わせる箇所もあるが、決して深掘りされることはない。

そもそも、主人公チームの外に、対立する強力なライバル/敵役の存在が感じられない。ロン・ハワード監督の傑作『ラッシュ/プライドと友情』に描かれたジェームス・ハントとニキ・ラウダのように、物語を強力に牽引する対立の構図が本作には欠けている。聞くところによると、製作のジェリー・ブラッカイマーが実際のF1レースをロケ撮影するため、FIA(国際自動車連盟)や各チームを説得するにあたり、決して彼らを「不利な立場に置く」ような描き方はしないと約束したのだとか。果たしてそれが「敵役不在」に影響したのかどうか。ともあれ、ロケ映像自体は劇中ふんだんに使われ、リアル感を高めることに寄与しているのだが。

それではと、主人公のチーム内に目をやると、こちらも対立や葛藤はさらりと描かれるにとどまっている。ベテランとルーキーのつばぜり合い、監督・メカニックとドライバーとの確執、スポンサーと現場の内部抗争――これらがドラマの緊張感を高めることはない。また、友情や恋愛感情が土壇場で彼らの判断力を鈍らせることもない。その点ではジェームズ・マンゴールド監督の『フォードvsフェラーリ』やマイケル・マン監督の『フェラーリ』を観た時のような満足感は薄いかもしれない。

そもそもブラピは「元ヒーローで、賞金やトロフィーに執着しない不遜な一匹狼」として描かれ、女性からもモテモテ。だがレース中に次々とグレーゾーンの奇策を編み出すやり口は、「ルールの裏をかくアンチヒーロー」というより、むしろ『スラップ・ショット』のうらびれたポール・ニューマン、といった印象なのだ。

ついでに言うと、ルーキーが事故って火傷を負った時、自分の判断ミスが原因とは本人を含め誰も認めず、ずっと後に、やはりアレはブラピのせいじゃない、自分のミスだったとルーキーくんが気づくあたりも、なんだか釈然としない。

そんなわけで、ブラピのイケオジぶりとアトラクションムービーとしての面白さだけで2時間35分を引っ張るのはさすがにキツいが、IMAXのような巨大スクリーンと極上音響で、過去のカーレースものとは段違いの没入感を「体感」するだけでも大いに価値ありと言える。

なお前半、IMAXの前5列目から見上げたハビエル・バルデムさんの顔面クローズアップは顔圧すさまじく、網膜に焼き付けられるほどインパクトがあった。ご注意を(笑)。
以上、最速IMAXプレミアム試写会にて鑑賞。

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いたりきたり