ふつうの子どものレビュー・感想・評価
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等身大の子供たちによる、普通じゃない一作
『ハルモニ』(2003)、『そこのみにて光り輝く』(2014)など、多数の作品で高い評価を得てきた呉美保監督による、小学校を中心とした世界を描いた作品です。
登場人物の多くは団地の住民であり、自宅、学校、遊び場、農場、などなど、ある程度領域の定まった生活環境で錯綜しつつ日常を送っていく様を見るだけでも楽しく、もちろん「子供映画」なのですが、同時に「団地映画」としても観ることができます。
主人公の上田唯士を演じた嶋田鉄太はもちろん、どの小学生の俳優たちも、もちろん演技がうまいんだけど芝居じみたところはなく、まるで彼らの日常に溶け込んでいるかのような描写は、時に微笑ましくも驚かされます。
いかにも一人っ子的な独白の多い唯士、使命感は強いが自身の独善さに気が付くほどには成長していない三宅心愛を演じた瑠璃、そしてクラスに必ず一人はいるような腕白少年でありながら…という、ある種最も複雑な人間像を備えた橋本陽斗を、その動きだけで表現してみせた味元耀大、など、彼らのはつらつとした演技が目を引きますが、同時に、彼らよりも少ない登場場面だけでそれぞれの個性、家庭像を表現して見せた、蒼井優を始めとした親世代の俳優たちのすばらしさも際立っています。
本作を団地映画としてみるなら、『イノセンツ』(2023)も少し雰囲気の似た北欧映画として比較してみると面白そう(起きる事態は本作と比べてシャレにならない度が桁違いなんだけど)。
あるいは本作と同様、小学生の子供たちに密着した、山崎エマ監督によるドキュメンタリー映画『小学校~それは小さな社会~』(2023)と見比べてみるのも楽しそう。本作はこの、『小学校~』に対する一種の回答のようにも見えたんだけど、実際どうなんでしょう?
監督の作品の中でこれは面白い!
呉美保監督の作品は昨年のぼくが生きてる2つの世界に続いて2作目だが、振り幅が凄い。令和版小学校の子どもたちを主役にしたが、そうだよなと相槌を心の中で打ちながら観た。終盤は展開が読めたが、子ども視点で見た大人を見事に描いていた。はじめは令和版3人組シリーズ(児童文学)かと思ってしまったが。それにしても三宅さんの環境問題の考え方は凄い。呉美保監督の作品の中では今回が面白い。次回作に期待。
昭和の子ども
普通の大人は何もしていない
奇抜に見えても実はリアルに描かれる子どもたちを取り巻く社会
日本の貧困の姿をこれでもかと突きつける『そこのみにて光輝く』や、綺麗事を取っ払った日本の教育の厳しい現実を描く(教育関係者必見の)『きみはいい子』、コーダとして生まれた若者の息苦しさを描く『ぼくが生きてる、ふたつの世界』など社会の閉塞感を描かせたら右に出る者がいないのではないかと思わせる呉美保監督作品なので、侮れるわけがない。
スウェーデンのグレタ・トゥーンベリが2019年9月23日に国連本部で行ったスピーチで使って有名になった "How dare you!" ([あなたたち大人は]なんていうことを!)という叫びと、その後、世界中のSNSで彼女に浴びせかけられた誹謗中傷や罵詈雑言が、本作を制作するにあたってのインスピレーションの元になっていることは間違いない(実際にその映像も出てくるし)。
大人たちが地球環境を破壊しているから子どもたちが苦しむことになっているんだ、と啓蒙活動に乗り出す子どもたちの行動はどんどんエスカレートしていき、大人たちにとってはテロ行為とすら見なされるようになる。
大人たちは子どもたちを叱責するが、そもそも大人たちが当たり前だと思っている行動そのものが環境破壊に繋がっているという子どもたちの主張はうやむやにされていく。
クライマックスは終盤の学校の会議室の場面。自己中心さと保身と責任転嫁。その会話の噛み合わなさ具合といったら、本来なら笑える場面になるはずが、そこで映し出されるのは、どこにでもいる子ども、どこにでもいる先生、そしてどこにでもいる親なので、あまりにもリアルで、アルアル感が強く、笑うことすらできない。それは、まさに現代日本社会の縮図だといっても良い。
劇場を出た後、子どもと大人の対立の姿は、年金問題で若者が老人を敵視し攻撃する構図にも似ているなぁ、とも思った。仮に動機は純粋で善意を持ったものであったとしても、結果的に分断を招くことになる煽情的言動は社会にとってマイナスにしか働かない。まぁ、意図的にそれを狙った政治家も少なくないし、声の大きな人間の尻馬に乗った取り巻きが少なくないのも現実だけれども……。
最後に、『そこのみ…』等と比べると、本作は希望が残されているように終わっていることが本当に救いだ。
先ずは子どもを信じてあげる事から。
こどもって不思議
映画だからデフォルメされているだろうが、ふつうの子どもたちが、ただただ愛おしい。
なんか涙が出ちゃったヨ!
最近、我が家に野良の黒ネコ親子が棲みついた。強い雨の日に裏庭のデッキの床下に避難してきたようなのだが、居心地がいいのかそのまま居着いたようだ。
ふと見ると、デッキうえの日陰でこねこ4匹がジャレあっているではないか!あまりのかわいさに、つい見惚れていると、母ネコがのっそり現れて、なにみてんのよ、とばかりにガン見された。その圧に負けて私は家の中に引っ込んだのだが、それから孫が欲しいとせつに願うようになった。
三人の子どもは結婚する気はさらさらなさそうなので、なおさらである。
もともとの感情がこねこに刺激され、唯士くんで頂点に達したようだ。だから涙なのだ。
賢そうでどこかおとぼけな唯士くんにすっかりやられてしまった。
だから☆5つなのだ。
いろいろやらかしたけど、それもヨシ!
自分の気持ちも安易過ぎるとは思うけど、それもヨシ!
純粋なこころの可愛らしさと鋭利さ
前半はこどもたちの振る舞いがひたすら面白い。
自由奔放でありつつ、
恋心をもつ異性に対して女の子のおませな感じ、
男の子の率直な不器用な感じも微笑ましく楽しい。
後半は一転して彼らの純粋さが凶器と化し、
大人の矛盾、いい加減さを容赦なく突き刺してくる。
妥協は共同体をうまく生きる知恵だったりもするのだが、
こども達には通じず、刃は研ぎ澄まされていく。
最後は親たちが慌てふためき、
ギクシャクする様がすごく面白いが、皮肉的にも感じる。
結局はこどもたちを力で押し込めようとするも、
消えていない心の内面の炎を暗示するような、
ハッとさせる余韻のあるラストがすばらしい。
こども目線の手持ちカメラの構図や、
主張しすぎない軽快なリズム主体の音楽も良い感じ。
タイトルに偽りなし。子どもたちの世界はいつだってカオスでそれが普通
主人公を演じた嶋田鉄太くんのオープニングの顔がもうズルい(笑)。ところどころ笑っちゃうのが、本が面白いからか彼が面白いからかがわからなくなった。
飢えや戦争を知らない世代の日本人なら10歳くらいまでは、この50年くらいほとんど変わらない日々を暮らしてんだな、登場する子どもたち一人一人を自分の同級生に置き換えられそうだななんて思えて、なんとなく安心する世界だった。まさにふううの子どもたち。
この年頃って女の子の方がしっかりしてるし強いよね。そんな心愛を演じた瑠璃さんがとても良かった。
久しぶりに映画館で観た蒼井優さんは、すっかりお母さんが板についてたなー。瀧内公美さんは、瀧内公美色強過ぎて怖かったなー
唯士くん役の表情がとっても良い
子どもたちの演技が自然すぎてドキュメンタリーを観ているようだった。
10歳の唯士が、環境問題に熱心なクラスメイトに恋をする。が、その子は同じクラスのちょっとやんちゃな子が気になっている。そんな3人がひょんなことから、環境意識を大人に高めてもらいたいといたずらにもとれる取り組みに夢中になるが、それがエスカレートして、事件が起こってしまう。
事の発端が何だったのか、親子共に呼び出された会議室でのやり取りで、今まで子どもだけにフォーカスされてきたストーリーが広がって見えた。
クラス担任に風間俊介、唯士の母に蒼井優、心愛の母に滝内公美。
子どもにまつわる話を大人キャストが良い具合に締めている。おもしろかった。
子どもの「主体性」の育て方
「ふつうの子ども」というタイトルから、少し嫌な予感もした。「子どものナチュラルな姿が可愛いでしょ」という大人の自意識が透けて見えるような映画だったら。または子どものキャラ任せで投げ出すような映画だったら。しかし、どちらも杞憂に終わる快作だった。
子どもの無邪気さ、ズルさや怖さをありのままに描くための、冷静な観察眼や再現力。さらには大人のほうも裸にされる覚悟なしには、こういう映画は作れないと思う。
まずは前半に出てくる授業のシーンが良い。「私の毎日」という題で発表される小学生たちの作文は、子どもらしい発想ともいえるが、テーマのおおざっぱさに乗じたユルいシロモノ。担任の先生(風間俊介さん)は昔のように頭ごなしに否定もできず、指導に苦心する。
グレタ・トゥーンベリばりに大人批判の演説を書いたミヤケさん(瑠璃さん)には、「そういう内容はSDGsの授業でやろうか」といなそうとして反撃に遭う。毎日のルーティンを正直に綴った主人公のユイシ(嶋田鉄太さん)には、失われた先生の威厳を取り戻すかのように「自由とふざけるのは違う」と冷たく切り捨ててしまう。
そう、子どもを枠にはめずに主体性を伸ばす教育が求められているけれど、大人もどこまで認めていいのか分からない。男女問わず「さん」付けで呼ぶ先生、「つぶさない子育て」を愛読しているユイシの母(蒼井優さん)。それを疑問視しながらも妻の料理へのリップサービスは忘れない夫。みんなどこか不安を抱えながら令和の大人を演じている。
映画の後半は大人への底知れぬ怒りを抱えたミヤケさんに、やんちゃなハルト(味元耀大さん)、惚れた弱みでいいところを見せたいユイシらが加わり、直接行動も辞さない環境活動家ごっこが始まる。
もちろん結局はバレて叱られてしまうわけだが、3人の中で一番凡人のユイシが抱える「やってしまった」感は法廷映画ばりに痛切に胸に迫ってきた。「ミヤケさん好きさのあまり魔が差しました」という告白は英雄的といっていい名場面だと思う。
それに天真爛漫な女の子(長峰くみさん)と駄菓子屋でデートする場面は、まるで政治犯が逮捕される前のつかの間の幸せだね。
惜しむらくは、いきなりの街頭活動は唐突に感じ、もう少し自然なきっかけが欲しかった。そうしたら大人に一矢報いる痛快感がもっと出たと思う。学校の授業でSDGsのポスターを作るなど「主体性」を教育するエピソードがあると、大人の矛盾もいっそう際立ったのではないか。
主人公の子のトボけた感じが良かったですね(^-^)
呉美保監督作品。
昨年見た『ぼくが生きてる、ふたつの世界』は私の中では映画館で見たベスト1でした。
この映画は、映画館で予告を見ていてみたいと思っていた。
ほとんどのシーンが子役が出てくるシーン。
主人公の子のトボけた感じが良い。
予告を見て、コメディチックで子供の淡い恋心を描いた映画なんだろうと思っていたら違っていた。
環境問題に興味を持つ女の子に恋心を抱くというところまでは想定通りだったけど、それから大胆な行動に移って行く。
えっ、小学生がココまでって感じがしながら見ていた。
純粋に環境問題意識からの行動じゃなく、三者三様の理由があっての行動。
それには親の存在なかも絡んでの展開。
心温まる映画というより、今の社会風刺的な映画であったように思う。
お母さん役の蒼井優、瀧内公美、良かったです。
蒼井優は久しぶりに見て気がした。
私的にはもっと子供目線で純粋な世界を描いて欲しかったかな。
あの主人公の子役のトボけた感じを活かす展開がもっとあったように思った。
親と子供の関係は千差万別。
いろんな親がいる中で、いろんな子供が育っていくというのが分かる映画でした。
瀧内公美が捲ってきた
ずっと観てる間、もう一息マジックというかスパイスが欲しいと思ってたところに瀧内公美が捲ってきた。どういう親なんだろう。バリキャリ路線ではあるが、男の子ってそうだもんねなどのちょっとオバサン掛かったニュアンスも堪らない。前日知らないおばさんに飲み屋で子供を育てるのがいかに大変かを聞かされたのでなおさら染みる。自分が学校に呼び出されるなんてシチュエーションになったらテンション上がりすぎて楽しくなっちゃうな。キタキターって。不思議なトーンのクラスメートが気になっていたが長峰というらしい。意図的に何を言ってるか分かりづらいハイテンションなキャラクターなのだが、この子が特に今後が楽しみ。とにかく不思議な雰囲気だ。私の従姉妹がルック含めて小さい頃こんな雰囲気だった気もするのでどこか懐かしい気持ちにもなる。子供の演技の面白さがほかの作品と比較してやっぱり素晴らしい。
小学生あるある。
唯士くんの淡い切ない気持ち!
お父さんの不在
とまでは言えないとしてもその存在感の薄さ、軽さということが印象に残りました。唯士のお父さんはママに比べたら0.75くらい、陽斗のお父さんはママに比べたら0.5かそれ以下。心愛のお父さんはゼロ。離婚しているのかもしれません。お父さんたちはどうしちゃったんだろうと思うけど、これが現在のリアルな姿、でしょうか。
最後の会議室のシーン、ふだん教室ではいばってる陽斗は泣いてばかり。唯士も頼りない。でも、追い詰められて途中、意を決する姿は凛々しい。心愛は一人、逃げない、投げ出さない、ひとのせいにしない、言い訳もしない。映画をこの上なく心地よいものしているのは、監督の信頼と希望を示すこのシーンのおかげかと思います。
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