「【”エコテロリズムの裏に秘めた恋心。”今作は小学生男女三人の過激な環境保護活動の陰に隠された夫々が抱える事情を、現代社会が抱える諸問題を寓話性を含ませて描いた逸品であり、名子役多数出演作でもある。】」ふつうの子ども NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”エコテロリズムの裏に秘めた恋心。”今作は小学生男女三人の過激な環境保護活動の陰に隠された夫々が抱える事情を、現代社会が抱える諸問題を寓話性を含ませて描いた逸品であり、名子役多数出演作でもある。】
■小学生のユイシ君は、子供の自主性を伸ばす教育に熱心なお母さん(蒼井優)の下で育つ、生きものと駄菓子が好きな普通の男の子である。クラスメイトには環境問題に高い意識を持つココアさんがいる。
或る日、作文を各自が発表する時間に、ココアさんは環境問題に無関心で、車を乗り回したりする大人達を、舌鋒鋭く批判する作文を毅然とした顔で読み上げる。その姿を見たユイシ君は彼女に惚れてしまい、直ぐに、”環境問題に高い意識を持つ”小学生に変身し、ココアさんに近づいていく。だが、どうもココアさんは、ヤンチャなチョイ、イケメンのハルト君が気になるようである。
三人は活動を開始する。
スーパーの駐車場に停めてある車のガラスに”車を使うな!”と新聞紙の切り抜き文字で作った紙を貼ったり、肉屋さんにロケット花火を打ち込んだり、果ては酪農家の牛舎の柵を取り外すのである。すると、牛が町に出て来てしまい、大騒動。
三人は保護者と共に担任の先生(風間俊介)とオッカナイ女性先生から呼び出しとなるのである。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・大変に面白く、且つ寓話性に富んだ内容でありながら、小学生の男の子の淡い恋心を見事に描き出している作品である。
又、小さな名優多数登場作であり、特にユイシ君を演じた嶋田鉄太君とココアさんを演じた瑠璃さんは、凄かったなあ。アンナに自然な演技が出来る俳優さんって、大人でもそうそうはいないと思った程である。
・ユイシ君がココアさんの気を引くために、環境の本を彼女から借りたり、図書館でもわざとらしく咳をしながら、ちゃっかりと彼女の隣に座る姿は、とても可愛いのである。
・だが、ココアさんはまるで、グレタ・トゥーンべリさんの如く、背筋を伸ばし”キリッとした顔で”環境問題の本を読むのである。彼女の眼中でのユイシ君は、”只のエコテロリズムのメンバー”なのである。(涙)
そして、彼らの大人に対する攻撃は、何処か、誰かに同調して他者に圧力を駆ける現代の風潮を描いているような気がしたのである。
■だが、三人の行動はあっと言う間にバレて、保護者と共に担任の先生とオッカナイ女性先生から呼び出しとなるのであるが、このシーンが良かったのである。
1.ヤンチャなハルト君は、小さな姉弟を三人抱えたお母さんに抱き着くばかり。チョイ、情けない。そして、ナント!”首謀者はユイシ君”と主張するココアさんに同調するかの如く、彼の顔を見ずに指指すのである。お母さんは、”息子は首謀者じゃない。”というばかり。そんな彼を冷ややかな顔で見るココアさん。
だが、お母さんから”お兄ちゃん、お兄ちゃん。”と呼ばれる彼が、学校でヤンチャだった理由も分かるのである。お母さんに頼られ過ぎて、寂しかったんだよね。
2.ココアさんのお母さん(瀧内公美)が”キリッとした顔で”遅れて入って来る。お母さんは首にタトゥーが入っているキャリアウーマン風で、イキナリ”この子が首謀者でしょ!”と我が子を睨みつけるのである。そして”この子、昔は可愛かったんですよ!”と大きな声で皆に告げるのである。
成程なあ、ココアさんが激しく大人を糾弾していた理由が分かるシーンである。
それにしても、流石、瀧内公美さんである。抜群の存在感である。そして怖かったなあ。その脇で、ココアさんは固い表情で、英語で環境問題について涙を一粒流しながら話し続けるのである・・。
3.その時にユイシ君は、ハッキリした声で言うのである。
”僕がやりました。ココアちゃんが好きだから!”このシーンは沁みたなあ。そして私は思ったのである。”君は、立派だ。自分の非を認めない変な大人より、キチンと謝れる君は、余程立派だ!”とね。
更に、ココアさんのお母さんが”立派だねえ。”と大きな声で言うと、ユイシ君のお母さんは毅然として”少し、黙って!”とキツイ顔で、ココアさんのお母さんの顔を睨みつけるのである。
”瀧内公美VS蒼井優”シーンであり、蒼井優が優しくも息子を想う強き母である事を示しているシーンでもある。
・そして、皆は警察の事情聴取に行くのだが、ユイシ君は大好きな昆虫を見つけて、掌に載せていると、そこに昆虫には興味が無かった筈のココアさんが駆けて来て”その虫の名前は何ていうの?”と笑顔で問いかけ、更には声に出さずに、グレタ・トゥーンべリさんの如く”How dare you”と呟くのである。
<今作は、小学生男女三人の過激な環境保護活動の陰に隠された夫々が抱える事情を、現代社会が抱える諸問題を寓話性を含ませて描いた逸品であり、名子役多数出演作でもあるのである。
お見事です、呉美保監督。>
<2025年10月19日 刈谷日劇にて観賞>
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■初めて、刈谷日劇に来場される方へ
<HPには記載されていない事です。>
1.HP記載の上映時間と共に、学校のチャイムの如き音が鳴り、劇場内は暗転し、一本だけ映画の予告編が流れ、映画泥棒が流れて、直ぐに本編が始まります。シネコンと違うので、お早目の到着をお願いいたします。
2.WCは待合室にはありません。スクリーン1も2も劇場内に入らないと行けません。
時折、いや、頻繁にスタッフの方に”WCは何処ですか?”と聞くお客さんがいらっしゃるので、ここも肝要です。因みに『刈谷日劇』が入っているビル内にもありません。
3.飲料販売機はありますが、ポップコーンはありません。パンフレットはあったりなかったりです。基本的にセカンド上映で良作を上映してくれる映画館ですから。
■西三河に一軒だけある歴史70年を超すミニシアター『刈谷日劇』は、残念乍ら年内で閉館されるそうです。それまでに一度来館されては、如何でしょうか?
名古屋からでも、豊橋からでも刈谷駅乗り換えで、結構早く来れますよ。

