「余韻がすごい」火喰鳥を、喰う 髄さんの映画レビュー(感想・評価)
余韻がすごい
映像や音の不穏さがじっとり感を際立たせていて良かったです。ジャンプスケアやグロ描写は相当マイルドでしたがとにかく人間が怖いと思った作品でした。
内容について。
不可解な事が次々と起こるので見逃したら疑問が残りそう。考察できるところも多く、何回か見ると理解が深まって面白そうです。よく分からなかった、と低評価のまま終わるのはもったいない。
演出は賛否両論あるだろうと思いますが、主要キャストの3人がキャラにぴったりハマっていて良かったです!非現実的なことは信じないけれど話は聞き、妻を守りたいと思う雄司、葛藤しながらも今の生活を守りたい夕里子、2人の空気感が最高でした。北斗総一郎は最初から異物感が凄かったけれど違和感はなくて、胡散臭いのに説得力があり聞き入ってしまいました。
生への、生活への、家族への、そしてかつての恋人への、それぞれの執着が絡み合って現実ともうひとつの世界が交わっていく様子にぞっとしました。
雄司は亮に言われた通り、何かに対する執着が人より弱かったせいで貞一の生への執着と千弥子の生活への執着、そして北斗の執着に負けたんだなと思うと切ない。
雄司をはじめ久喜家の人間は目を逸らしている側の人間(不可解なことから、暗い過去から、自分の力から)だけれど、北斗は受け止めていた。その対比構造も良かったです。北斗はある意味真っ直ぐな人で、あっちの世界の「彼」が幸せになるためにきっかけを作り、殺されるために動く。怖いしきもかったのになんだか寂しい人なんだな、と主題歌の化け物を聞いて余韻に浸っていました。
個人的にはマルチエンドのゲームやクトゥルフ神話TRPGを見ているような感覚で面白かったです。あの時こうだったらこんな世界線があったな、という分岐点が日記であり北斗だったんだろうな。
あとパンフレットがすごく面白いのでぜひ読んで欲しいです。
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