「結末は、最悪の事態から回避する最後の手段であったのか」火喰鳥を、喰う 猿田猿太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
結末は、最悪の事態から回避する最後の手段であったのか
正直、自分の読み取りが不足であったのかと思う。結末とタイトルに関連性が見出せない。でも、興味深い点が多々あったと思うので、あまり評価は下げたくありません。
早速ネタバレしますが、勿論ですが「火食鳥」とは「人肉」のことで、わざわざ「クイタイ」「クッタ」「ビミダッタ(だったかな)」と日記に書き綴ったのは「そうだ、あれは人肉じゃない、鳥の肉だ、俺は火食鳥の肉を食ったのだ」と決めつけ、日記に綴り、生き抜かなければならなかった恐ろしい過去。悲惨な戦争体験。前半の日記を読むシーンで既にピンときました。
でも、この時点でそうと判ってしまうと映画が終わってしまうと思いきや、弟君の突飛な行動。日記の続きを書いてしまうという暴挙。亡霊が取り憑いてしまったのか、日記の書き手の妄執がそうさせてしまったのか。
そして怪しすぎる「北斗」という男。あからさまに怪しい。怪しいですよーと顔に書いてあるかのような怪しさ。でも微妙に絶妙なことを言っている気もする。でも正直いって言ってることが判らない。私には難しい映画は駄目なのかと、ちょっと落ち込みかけたのですが、ちょっと面白い概念を知りました。
墓石を削り、日記を提示し、「祖父の兄は生きている」という証拠を並べていけば、周囲の人々はそのように動き出してしまう。既成事実を固めるだけで世界が改変されてしまう恐ろしい超常現象。だから、弟君は「祖父の兄」が生きているかのように操られて、日記の続きを書いてしまったのか。更には主人公をも夢遊病患者のように振る舞わせ、あわや事故にあいかけてしまったのか。まるで呪術のような、あるいは催眠効果なんだろうか。ただし、女性の記者の車の発火や、生還した老人の家を焼くのは人為的には可能だけれど。ああそうか、弟君も裏で繋がってたら、それも人為的に可能ですね。
結局、「北斗」の目的はなんだろう。弟君が忠告していた通り、自分の欲しいものは何が何でも手に入れたい。主人公の嫁である美月さん演ずる夕里子さんを何としてでも。それが叶うのは、「祖父の兄が生きているパラレルワールド」ということだったのか。写真を加工し、墓を削り、既成事実を積み上げ、夕里子さんを手に入れる世界線へと移行するために。
そして、それは叶ってしまう。映画はそこに至って終える。なんだか納得いかない。珍しくも悪は栄えるバッドエンドなのかと思ったけど、そうしないと、主人公の彼が最悪の状態に陥ってしまう。それを救うために夕里子さんは身を投げ打ったのだろうか。最後に「北斗」が伴って現れた夕里子さんの顔はスケープゴートと例えたくなる無表情。
そして、互いに知り合わない関係となった世界線で、夕里子さんは主人公に振り返る。ここで理解したつもりです。ああそうか、「こちらからみたバタフライ・エフェクト」だったのかと。相手の幸せを願うならば、自分が幸せを得る世界線では駄目なのだ、と。
でもやっぱり、そこにタイトルの「火食鳥」は欠片も登場しない。いろいろ興味深い映画だったんですけどね。ただ、頭の悪い私には理解が追いついていない気がしてならない。結論的に、この映画はミステリーなのか、ホラーなのか。最後の結末は、もしかしたらパラレルワールドの概念を用いたSFだったのかと思う。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。