「奇跡を引き寄せた男たちの物語」ラスト・ブレス おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
奇跡を引き寄せた男たちの物語
■ 作品情報
監督アレックス・パーキンソン。脚本はミッチェル・ラフォーチュン、アレックス・パーキンソン、デビッド・ブルックス。主要キャストはウディ・ハレルソン(ダンカン)、シム・リウ(デイヴ)、フィン・コール(クリス)、クリフ・カーティス(アンドレ)。製作国はアメリカとイギリス。
■ ストーリー
北海の海底に敷設されたガスパイプラインの補修作業を担う潜水支援船タロス号。ベテラン潜水士ダンカン、プロ意識の高いデイヴ、若手のクリスら飽和潜水士たちは、水深91メートルもの深海で命懸けの作業にあたっていた。しかし、作業中にタロス号のコンピュータシステムが異常をきたし、制御不能に陥る。荒波に流されたタロス号の影響で、クリスの命綱が切れてしまい、彼は暗闇の深海へと投げ出された。潜水服に装備された緊急ボンベの酸素は、わずか10分しかもたない絶望的な状況だ。海底の潜水ベルに残されたダンカンとデイヴ、そしてタロス号の乗組員たちは、クリスを救うべくあらゆる手段を尽くし、時間との壮絶な闘いを繰り広げる。
■ 感想
朝一番に本作を鑑賞したのですが、息苦しいまでの緊迫感に心臓が締め付けられるようでした。海底にガスパイプラインが敷かれていることは知っていましたが、そのメンテナンスのために、これほどまでに命懸けの仕事が存在するとは知りませんでした。私たちの便利で豊かな生活の裏側には、それを支える名もなき英雄たちの尽力があるのだと改めて気づかされます。
本作は、そんな陰で奮闘する飽和潜水士たちにスポットを当て、彼らの過酷な現実と強い絆を描き出しています。水深100メートル近い深海での作業が、いかに緻密な準備と多くのスタッフ、そして最新の機材によって支えられているのかが詳細に描かれており、それだけでも大変勉強になります。海中での事故は想像を絶する緊張感をもたらし、クリスの緊急ボンベの酸素が底をつき、もはや絶望的と思える状況でも、船内の誰もが最後まで諦めなかった姿には胸を打たれます。
結果的に30分もの無酸素状態からの生還、しかも後遺症が一切ないという奇跡は、仲間たちの強い思いと不屈の精神が引き寄せたものに他なりません。事故後、わずかな期間で再び仕事へと戻っていく男たちの仕事に対する意地と誇り、そして海への深い憧憬が感じられます。きっと今この瞬間も、世界のどこかの海で彼らが潜っているのでしょう。これからも彼らの安全が守られることを心から願ってやみません。ラストで映し出される本人たちの穏やかな映像は、その奇跡的な生還の重みと、その後の幸せな人生を物語っているようで、思わず涙がこみ上げてきます。本当に助かってよかった、と心底思います。
