「複雑な苦い現実世界の肯定」逆火 HKさんの映画レビュー(感想・評価)
複雑な苦い現実世界の肯定
現実の苦さをこれでもかと突きつけてくる映画。
その苦さを北村有起哉さんが見事に体現している。
映像の世界の裏方を物語の舞台として、
感動物語に偏向しがちな業界への批判、
合わせてビジネスという観点での難しさ、作り手の苦悩を
さまざまな立場の関係者の群像劇として
複雑、多層的にみせる構成がすばらしい。
冒頭とラストの屋上シーンの対比も見事。
自分に嘘をついても、逞しくしたたかな人間が生き延び、
自分に嘘をつけない正直な人間は、
救いの希少な現実世界に苦しみ、落ちていく。
明快な示唆、シンプルな答えによって
誰かが背中を押してくれることなんてほとんどなく、
それぞれが悩み、苦しんで答えを探していくしかない、
そんな複雑な現実世界を肯定してくれるような映画でした。
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