「沁みた。烏滸がましくもオダギリジョーさんに自分を投影したみたい」夏の砂の上 たずーさんの映画レビュー(感想・評価)
沁みた。烏滸がましくもオダギリジョーさんに自分を投影したみたい
映画館で見るともなしに見た予告編と映画館のポスター以外は、内容についての事前情報を得ずに鑑賞(まぁそういうことが多い)。ポスターにいる4人は皆さんとても好きな俳優さんなので、観ないという選択肢はない。今年だけで何度目よ?の光石研さんもいるのね…。
…沁みた。エンドロールまでは淡々と観てたのに、劇場内が明るくなったらどうやら心が動いていることに気づいてちょっと驚く。とりあえずパンフを買った(まだ読んでいない。これもあるある。結局読まないこともある)。映画館から新宿駅まで歩いているうちに込み上げてくるものが。かなり驚き。自分が乾いていることを自覚した。
50を過ぎて作品中の人物と自分を重ねるようなことがほぼなくなっていて、そんな見方をすることすら忘れていたし、この映画も観ているときに共感共鳴しているわけではなかった。ところが、終わってから1分2分と時間が経つごとに映画の描写が、オダギリさん演じる小浦治の心情が思い浮かんで、じわじわと心に浸透してきた。楽しそうに行き交う人をよけながら一人歩く新宿東口界隈の景色が滲んだ。
主人公の年代、姪っ子という存在、兄弟との関係性、夫婦のかたち、失った仕事、労働意欲、海が近くて坂がちな田舎町、その田舎町の狭い人間関係…自分の過去と現在の状況が時系列や程度は違っても多くの要素で重なっていることに思い当たる。いやー、オダギリジョーさんに自分を投影するなんて烏滸がましいぞ🤛💢
オダギリさんと髙石あかりさんが、それぞれ不思議で微妙な感情を持つ人物を本当にうまく演じていたと思う。クライマックスの待望の雨のシーンについては、優子が鍋やたらいを並べる場所がそこなの?で、あそこで溜まった水なの?という疑問が浮かんでしまったけど、そこは目をつぶって、その後の居間でのあのシーンの素晴らしさ!あれは現実だろうが心象描写だろうがそんなのはどちらでもいいって思えるくらいの名シーンだった。
ラストの別れは、そう来るよねって思ったので、意外ではないけどやっぱり好き。
誰もが好きと言うような作品ではなく、誰にでもおすすめできる作品ではないのかも。人を選ぶ分、選ばれた人間には、深く沁み込む作品だと思う。
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