「結局、何を描きたかったのかが、よく分からない」夏の砂の上 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
結局、何を描きたかったのかが、よく分からない
いつまでたっても、何を描きたいのかがよく分からなかったのだが、終盤になって、男と、その姪の少女が、心を通わす物語だったのだということが分かってくる。
確かに、幼い息子を亡くし、妻とは別居して、職も失った男と、母親に捨てられ、バイト先の人間関係に馴染めず、彼氏ともうまくいかない姪とでは、不器用で、人付き合いが苦手なところがよく似ており、お互いに自分と同じ「匂い」を感じていたのだろうと思わせる。
ただ、それでも、姪が、男の妻に向かって「伯父さんの面倒は私が見る」と言い放ったり、久しぶりに雨が降って、2人で、たらいに溜めた雨水を飲み合ったりといった場面では、唐突感と脈略のなさを感じざるを得ないし、「どうしてそうなるの?」といった疑問も湧いてくる。(雨水を飲むのは、衛生面でも、よろしくないのではないか?)
もし、男と姪の絆のようなものを描きたかったのであれば、2人が、互いの心の距離を縮めていくようなエピソードを、もっときめ細かく、丁寧に描くべきだったと思えてならない。
むしろ、心に残ったのは、葬式の場で、男の後輩の妻が、男の妻と自分の夫が浮気をしているのを黙認している男を責める場面で、後輩の妻が徐々に感情を激化させていく様子を長回しで捉えたシーンは、篠原ゆき子の熱演もあって、見応えがあったと思う。
ただ、その後、男の妻が、葬式の手伝いに行こうとしている場面で、普通だったら、男は、彼女が、浮気相手の妻と鉢合わせしないように、葬式に行くのを止めようとすると思うのだが、彼女を押し倒して乱暴しようとしたことには、「いったい何を考えているのか」という疑問を抱かざるを得なかった。
男と姪が心を通わせたと思ったところで、姪が、母親と一緒にバンクーバーに旅立つというラストにも、「面倒を見るんじゃなかったいかい」と突っ込みを入れたくなる。
そうでなくても、左手の指を欠損した男には、身の回りの世話をしてくれる人が必要なはずなので、ここは、どう考えても、姪は、男と共に長崎に残るという展開にするべきだったのではないだろうか?
ようやくと作品のテーマが分かりかけたところで、最後の最後で、また、何を描きたかったのかが、分からなくなってしまった。
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