「意外と考えさせられる」THE MONKEY ザ・モンキー クラさんの映画レビュー(感想・評価)
意外と考えさせられる
身体が四散する派手な死に方が印象的だが、全体的にコメディというか喜劇に近い作品である。監督のオズグッド・パーキンスは、前作「ロングレッグス」でも独特な演出が光っていたが、本作はそれを更に派手にした様だ。シリアスな展開でも台詞1つでニヤッと笑える形であり、人が死ぬと現れて全力で死をパフォーマンスで表現するチアリーダー等、現実味を帯びたシリアスな展開だったり、死に打ちひしがれる様な情に訴えかける様な演出は皆無であり、物凄く人の死や人生を軽く扱った様にも感じる作品だ。
観る人によっては不快だろうし、面白く感じないかも知れない。恐らくだが製作サイドはそれを狙ってやっているだろう。
ニュースや新聞で見る他人の死に対し、我々は食事をしながら「気の毒だね〜」なんて他人事の様に感じていないだろうか。それが自身の身内だったり、はたまた自分自身だったりすると変えることの出来ない事でも抗おうともがくはずである。本作に登場するサルの人形も、他人の死は他人事である。別に人が死ねば死ぬほどサルが力を付けて巨大化したり、命が与えられる事は無く、淡々と誰かが巻いたゼンマイの動きに従っているだけであり、目の前の惨状を無表情で見つめているだけなのだ。"今観てるお前たちもどうせ自分に振りかからない他人の死はどうでも良いんだろ?"と製作サイドがこちらに投げかけている様に感じてならない。それがこの喜劇で描かれているのではないだろうか。
予想外にスペシャルゲストが登場するが、登場人物が誰も彼もがクセ者であり、終始怖いよりも面白いが勝っていた。だが、ただのブラックコメディ等ではなく、劇中でも語られる、"どんな形であれど、誰にでも死は訪れる"という事だ。皆自分が主人公だと思い生活しているが、そんな事は無く、事故、病気等でも突然未来が失われるのも皆平等であるのだ。こんなバカバカしい作品かも知れないが、そんな事を考えさせられる体験が出来た。
