ルノワールのレビュー・感想・評価
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タイトル通り
『ルノワール』を観ていると、2022年公開の『こちらあみ子』がふと頭に浮かんだ。
どちらも、普通とは少し違う感覚を持った少女の視点から世界を見つめている。
言葉や感情を大げさに説明することはなく、映像や音の中に少女の内面を静かに映し出している。
この2作品に共通しているのは、少女たちの「世界の見え方の違い」を欠点や悲しみとしてではなく、もう一つの大切な視点として描いていることだ。
普通とは違うからといって劣っているわけではなく、その違いこそが彼女たちの世界を豊かにしている。
その静かな優しさや誠実さが、観た後に心にじんわりと残り、軽くなるような感覚をもたらしてくれる。
『ルノワール』には派手な展開や劇的な出来事はほとんどない。
しかし少女の視線を通して、世界の輪郭が揺らぎ、観ているこちらの心の中にある何かと静かに出会わせてくれる。
それはまるで、澱んでいた水が少しずつ澄んでいくように、自然と心が癒されていく感覚だ。
この映画は、誰かと感想を語り合うためのものではなく、ひとり静かに見つめて、自分の中にあるもやもや、よごれにそっと触れる時間をくれる。
だからこそ、個人的には一人で鑑賞されることを勧めたい。
フランス映画みたいな
本作の直後に見た映画とほぼ同じ感想に……
映画としてのルックは素晴らしいし、役者陣もみな好演。描かれているメッセージも濃厚で最後まで退屈することなく、しっかり鑑賞しました。
じゃあ、好きかと聞かれたらNoです。
知り合いに勧めるか?と聞かれてもNo。
すごく面白かったというわけではない。
上映中はそこそこ楽しんだけど、お話そのものには首を傾げるシーンも多く、極端な説明の省略によって、具体的な感想がほとんど出てこない、という稀有な作品です。
文字にしてみると本作の直後に見た「メガロポリス」と完全に同じになります。全然違う映画なのに。
断片的な場面場面の表現がすごく印象的
50年近くも埋もれていた記憶を刺激されました
積極的に観ようとした理由は河合優実さんの出演作だから。短い時間でもいつものように、しっかりと存在感を発揮してくれていました。
河合さんからどんな台詞がどんな表情と声色とテンポで産み落とされるのかを観るのが、ここのところの大きな楽しみの一つです(今期の朝ドラも蘭子の登場をいつも心待ちにしています)
で、「ルノアール」。
フキちゃんを演じた主演の鈴木唯さんの演技の素晴らしさは言わずもがな。こういう子をオーディションでしっかり射止めた制作サイドにも拍手です。
でも物語に関しては、刺さらない人にはまったく刺さらないんだろうな、とは思いました。
自分にとっては…課題の作文には嘘の物語。聞こえてくる会話を聞こえていない、関心がない、理解できないかのように振る舞いながら実はしっかり聴いていて覗き見る大人の世界。思いがけず家から遠く離れた場所に行き、一人で長い時間をかけて家に帰り着く…など、自分の子ども時代の記憶と重なるシーンが多くあって、50年近くも埋もれていた記憶をぐぐぐっと刺激される映画でした。
ただ、この手の物語にたくさん刺されすぎてしまって、不感症気味になっている身には、もう少し何かが足りない気がしました。フキちゃんと両親それぞれとの関係がとても健全な感じがして、もう少し歪みがほしかったとか?(両親との距離感はまさに昭和だとも思うし、健全な関係だからこそ怖いもの知らずの伸びやかな想像力が発揮されている気もするけど…)
好きな人目当ての夢いっぱいの恋物語もいいけど、まだ感性が鋭い若い子にこそこういう映画を観てほしいと思うのです。中高生が観たら5人に1人、少なくとも10人に1人くらいは心の隅にずっと残る映画なんじゃないかと思います。(河合優実さん目当てで観に行ったお前が言うな)
女の子ばかり見詰めていた
万人が理解出来る題材ではないけれど
同監督のPLAN75が私にはとても良かったので、この作品も観たいと思った。
女の子が主人公、ということ以外あまり内容を調べずに鑑賞。映像のテイストや流れる空気感、台詞で説明をするのではなく空気を撮影している感じが前作と共通していて、色々考えながら観られて面白かった。こう言っては何だが、この作品男性には理解難しいのでは。好奇心旺盛で感覚が鋭い女の子は大人が思う以上に色々見えているものだ。しかも昭和の小学生ならではの設定もあり、万人が理解出来る題材ではないかもしれない。空想と現実と夢のシーンを繋いで描いていて最初はあれ?と思うが徐々に慣れてくる、フキの思考が映像化され、いくつかのエピソードが流れていて徐々に話が紡がれる形、この描き方の力量は見事。少なくても私はこの映像に共感し小学生の頃の感覚を思い出して苦笑いした。
一つだけ、昭和〜平成頃の話ならパワハラを会社に指摘されそのための研修を受けるってまだ無い時代かと。お母さんのキャラクターは理解出来るので、集団カウンセリングの理由はもうちょっと違うものでも良かったかも。
全編通してノスタルジックな風景がとても印象的だった。
悲しみの側面だけじゃない「死」を考えさせられる作品。
無垢と闇とノスタルジー
カンヌもの、ということで期待半分で見たものの、なかなか評価が難しい作品だった。
時代設定が80年代後半の地方都市ということで、自分と同年代かやや上。キャンプファイアーでライディーンを踊っちゃうあたり異質さよりも懐かしさが上回ってしまった。終始それが発生してしまい痛々しさや恥ずかしさが漂う。
これがまったく違う国の違う時代の世相を表現しているものならば、より人々の無意識に滲み出る闇の部分や、子どもの無垢さが際立ったのではないかなと思われる。
つまり、ごく少数の人々を除けば、1980年後半の小学生から見た世界は異質で奇妙だったわけだ。
光の捉え方や映像美・空気感の表現は独特なものがあって良かったと思う。整音も良かったと思う。生活音とセリフのバランスが良く、メリハリがあった。
役者陣はさすがなもので、主人公の女の子の存在感はすばらしかった。
強いて言えばもう少し詩的な演出や構成があっても良かったのでは、とも思う。
透明な聖域
少女は、誰にも超えることができない「聖域」を持っている。それは透明な膜で包まれている。それをおびやかす「大人」という外界。本作は、少女と外界との共棲がなんとも爽やかに描かれている。
身近な母親との関係で言えば、少女は、母親が思っている以上にひたむきに日々を送っている。歪な外界にさらされて、とても危なっかしくは見えるけれども。がんで余命いくばくもない父親との関係で言えば、ダートの地方競馬場通いの彼に連れだって、馬のいななきの物まねと馬の絵を無心に書く彼女なのである。
超能力に魅せられ、外界との凹凸を、超常現象によりたいらにしていく彼女。外界に魔法をかけることで、彼女の聖域を無意識に守る姿は、自然体で少しも背伸びがない。
明るく仲良く元気よくは外界が作った幻想。現実は、聖域に侵入してくるものに折り合いをつけながら、少女は日々をやりすごしていく。子供らしさのらしさに惑わされることなく。成長した先のトラウマをも飲み込むために。
沖田フキという最高の主人公、だが…
最高の主人公だったのだが、
物語によって、徐々に消え去ってしまった。
あの友人が転校した所から、非常に残念。
前半は、まっじで期待したのにな。
善良でも上品でもない、等身大の主人公。
雑でガサツで超能力に夢中で。
本当にさいっこうの主人公像だったのに。
お母さんも本当に良かったよ、小言が小言の域を少しだけ超えててさ、本当にこの人疲れてるんだ…って実感できたもん
河合優実とのシーンとか、自転車乗るのを見上げるショットとか、マジですごい映画観てんじゃないかこれ……って期待感があったのになあ。
本当に脚本のせいだと思います。
でもまだまだ早川監督には期待している。
次作は優秀な脚本家とタッグを組んで、マジで最高な映画作って欲しい。
良くも悪くも、カンヌっぽかったのかな。
それが、なんでああなるんやーーー
そんで、河合優実と中島歩はなんやったんや…
古傷に塩。
主演の無垢さと神秘さに惹き込まれる
前作のPLAN75がとても好きだったので楽しみにしていた。
前作が終活の話で年配の主人公なのに対し、今作は小学生が主役と、正反対ではある。死を扱っており、テーマや全体的に漂う暗い雰囲気は似ている。
ただ、空気感としては今作はかなり異様であった。
ほぼすべてのシーンが逆光や暗いシーンで、かなり滅入りそうになるが、そのなかでも鈴木唯の純粋で、なかば何を考えているかわからない表情に救われた。ずっと見ていて飽きなかった。
それが今作の肝ではあり、わかりにくい部分ではある。
無垢で、自由奔放な行動の裏にどんな心情を隠し持っているのか、それを考えながらみる映画でもある。
周りの登場人物も一癖ある人物が並び、それがフキを通じて周りの人間関係をうごかしながら、フキ自身も変わっていく。
その過程を見るのも面白い。
一見するとよくわからない行動も、思い返してみると繋がっていると感じる。なかなか噛み応えのある作品である。
万人受けする映画ではないが、語りがいのある映画だった。
時代設定の意味は?
感受性が強く、好奇心旺盛な11歳の少女が、両親をはじめとする大人たちと様々に関わるひと夏の体験を、早川千絵監督がオリジナル脚本で作品化。
ありきたりな分かりやすい成長譚にはしたくない、という意図は理解できる。しかし、一つ一つのシーンやエピソードを羅列するだけで、エモーショナルな連続性といったものが考慮されていないので、だんだんと「一体何を見せられているのだろう」と気持ちが醒めてきてしまった。
超能力ブームや出会い系伝言ダイアルといったものが物語の展開に絡んではいるが、そもそもなぜ1980年代に時代設定したのか、その意味や狙いがつかめない。マルチ商法、怪しげなメンタルトレーニングや民間療法など、確かにその頃あった嫌な話が盛り込まれているが、それを今、作中に取り入れて再現する意味は?大人の哀しくも愚かしい面を表現したかったのだとしても、今となってはリアリティあるものとして迫ってこない。単純に、自分自身の少女時代に設定したというだけなのか…
主役の鈴木唯は、本心が窺い知れない感じがいい。石田ひかりは頑張っていた。リリー・フランキーのこけ具合もいい。他にも旬の役者が出演しているが、物足りなかった。カメラの色合いは素晴らしい。
蛇足だが、ルノワールというタイトルや、ポスターにもなっているヨットシーンには、本作に出資している外国資本への媚びのようなものを感じてしまった。
早川監督が本当に撮りたいように撮れたものなのか、次なる作品を待ちたい。
鈴木唯ちゃん、凄い!
早川千絵監督は「PLAN75」でとんでもなく身につまされる映画を作られたので、この「ルノワール」は辛い物語にならないで欲しいと念じながら観ていた。
主役の鈴木唯ちゃんは今年公開の「少年と犬」で西野七瀬の長い独白を焼肉屋で聞くことにになった少女の役も演じていたが、その時の印象は薄かったけれど、今回の作品では圧倒的な存在感を放ってくれた。自分の葬式の夢を見たことを作文にしたり、みなしごになってみたいと言ってたり、超能力にハマりトランプでテレパシーゲームを友だちとやったり、伝言ダイアル(今で言えば出会い系サイトか)に登録したり、とにかく色んなことに興味津々のちょっと変わった少女だが、学校のサマーキャンプでは楽しそうに弾けるし、何よりお父さんお母さんが大好きである。さらに子どもが持ってる残酷さ(本人に悪意はない?)が差し込まれ、等身大(少し背伸びしてるが)の小学5年生を上手に演じてくれた。
そのフキの伝言ダイアルだけど、相手になった坂東龍汰の毒牙にかかることなく中断できたし、ついでにお母さん(石田ひかり)の中島歩との不倫もダメになり、観ている側はホッとしました。
河合優実はチョイっとの出演だがフキの睡眠術にかかったふりをしながらの長いセリフをさらりとこなしてくれて物語にエッセンスを加えてくれた。「あんぱん」の蘭子役もそうだが脇役でもチョイ役でも輝いてくれてその映画やドラマを一段高めてくれる素晴らしい女優だ、。
リリー・フランキーは元々マルチな方で色んな役回りができるが、こういう感じの哀愁溢れる昭和のお父さん役はぴったりである。助演男優賞いけるんじゃないかと思う。
ラスト、朝のファミレスでお父さんが病室で使っていた少し臭いタオルに母と子がそれぞれ顔をのせて、ひと眠りするシーンが好きです。2人ともお父さんの色んなことを思い浮かべていたことでしょう。
私の念が通じたのか辛い物語ではなく、少女のひと夏の成長物語であった。フキはその豊かな感性はそのまま持っていてくれて、いい感じのオトナになって欲しいなぁ、。
伝言ダイヤル。
半分こどもで半分おとな
フキの姿はぷくぷくと自分のペースで呼吸しながら泳いでいく魚のように
知りたがる顔もせず
知らん顔もせず
ただひとりでじっと感じとりながら
その先をみつめている
キャンプ場で過ごしてるいるときの表情だけが他のみんなと変わらない気がしたけれど
そんな様子は自分にも記憶があるところだ
ポーカーフェイスも操りはじめ
半分おとなの半分こどもはみている、きいている
いいこともわるいことも隣り合わせで
喜びと哀しみは繰り返し
表と裏が重なりあう世界を知っていく
あの頃の独特なみずみずしさ、危うさ、賢さ、強さ、弱さをフキを演じる鈴木唯さんのナチュラルさが等身大で渡っていく未知なる海のなか
時には一緒にもぐり感傷的に
あるいは空から覗きこみ懐古的に
大人になったわたしは
そんな半分こども半分おとなの心の前で
どんなふうに居られるかな
水からあがった気だるさを包む乾いたタオルのやさしい感触とふんわりしたまどろみの心地よさを思い出しながらいる
修正追加あり
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