「監督の評価は保留にしたい」ルノワール ひぐまさんさんの映画レビュー(感想・評価)
監督の評価は保留にしたい
かなり難しい。上映中から大いに頭を悩ませた。
この映画の作者が何を言いたいのか、何を訴えたいのかはぼんやりとわかったつもり。それを言葉にしてこのレビューに残そうと思うといろいろと悩んでしまう。それが難しいと言った点。
ぶっちゃけで言ってしまえば早川千絵監督の個人映画であり、今の自分自身の残しておきたい映像を鈴木唯の姿を借りてフィルム(現代はフィルム撮影ではないよというツッコミはさておいて)に残せたわけだから、その意味でこの作品は大成功。どこのどんなツテを使ったかはわからないがそれがカンヌまで届いたのだからこれまた成功。過去にこんな手法で世に出た監督がいたなぁと思ったら河瀨直美の顔が浮かんできた(苦笑)。
彼女同様に早川監督は「撮れる」という評価はできるが、観客にどう伝わるかという考察が足りないのではないか?だから商業的に見ると当たり外れが大きい。最後まで僕を椅子に繋ぎとめておいたのはティーザーにも使用された楽しそうに踊るカット。これが最後の方にちょっとだけ出てきて、その印象だけで映画が終わる。論理に裏付けられた思考がないから論理ではなくただの印象だけで「良かった」「悪かった」と論じるしかない。それはこちら側も問題かもしれないが正直に。
全体を見るとここでも指摘の通り「お引越し」や「こちらあみ子」などの影響も感じる。もっとも「お引越し」は古すぎてこちらの記憶も定かではないすまん。
唯一、おそらく誰もが指摘するであろう技術的短所が整音だ。BGMがセリフに丸かぶりしたりきちんと拾えていなかったり。これは日本映画共通の弱点ではあるが今回は顕著だった。どうにかならないのかな。
ともかく、自己顕示欲丸出しのような今回の作品でも一定の評価は得たわけだから、早川監督には「伝える」技法をもっと研鑽していただき、真の評価は次の作品まで待ちたいと思う。
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