劇場公開日 2025年6月20日

「無邪気と残酷の狭間の11歳」ルノワール Tofuさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0無邪気と残酷の狭間の11歳

2025年6月20日
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鑑賞方法:映画館

主役のフキを演じる鈴木唯の母親が石田ひかり、父親がリリー・フランキーで、そこに絡んでくるのが中島歩、河合優実、坂東龍汰、と当代切っての人気者ばかり。どう考えてもブッキングしすぎの河合優実でなくとも、何でこんなに同じ俳優陣がキャスティングされるのか?彼らが実力者だとは認めても、やっぱり全体的に層が薄いんだろな。まぁ、話題の俳優しか選択基準を持たない観客にもその一因はあるのだろうけど。(とは言え、レイトショーがほぼ満席になっていたのだから、マーケティング的には成功しているのだろう。)

でも、本作については、そんな俳優部よりも、『PLAN 75』の早川千絵監督作品というのが、自分としてはポイントが大きい。

11歳のフキは子どもと大人のちょうど狭間。見た目は子どもでも、実はシビアな目で周りを見ている。だからと言って大人からするとまだまだ危うい部分も多い。そして、子どもらしい「無邪気さ」は、実は、「残酷さ」と表裏一体で、大人たちの心の隙間に入り込む闇をフキは見逃さない。

優しい顔をしながら人を見下していたり、日常の鬱憤を家庭外に求めてしまったり、弱っているときに怪しげな商品や宗教にすがってしまったり…… そんな人々の世間様向けの顔と現実に直面しているときの顔の狭間の心の葛藤は『PLAN 75』にも共通するテーマのようにも思える。

なお、タイトルの「ルノワール」について、パンフレットの中の監督インタビューで「80年代当時、ルノワールをはじめとした印象派の絵がすごく流行していて、煌びやかな額装を施したレプリカを販売する新聞広告をよく見かけました。(中略)そういう西洋に憧れる気持ちや物を飾って満足してしまうような精神があの時代の日本を象徴している気がして」いると早川監督は述べていて、バブルの薄っぺらな時代に人間関係も希薄になっていったことが現代社会の諸問題の発端になったと示唆しているのではないだろうか。

Tofu
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