「エピソードを、モンタージュ手法の駆使で一気に展開させるところが本作の特徴です。まるでスマホで動画を倍速で見ているかのように。そのため説明不足となるシーンも多々出てきます。」ベスト・キッド レジェンズ 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
エピソードを、モンタージュ手法の駆使で一気に展開させるところが本作の特徴です。まるでスマホで動画を倍速で見ているかのように。そのため説明不足となるシーンも多々出てきます。
1984年に1作目が公開されて大ヒットを記録し、続編やリメイク、スピンオフドラマ「コブラ会」も人気を博す「ベスト・キッド」のシリーズ通算6作目。
1984年のオリジナル版で主人公ダニエルを演じたラルフ・マッチオと、2010年のリメイク版でカンフーの師匠を演じたジャッキー・チェンが共演を果たしました。
●ストーリー
北京でミスター・ハン(ジャッキー・チェン)からカンフーの指導を受けていた17歳の高校生のリー・フォン(ベン・ウォン)は、最愛の兄を襲った不幸により母親のドクター・フォン(ミンナ・ウェン)と共にニューヨークに移住します。
カンフーでともに戦ってきた兄を失ってしまった悲しみから抜け出せず、カンフーで戦うことを封印したリーに手を差し伸べたのは、クラスメイトのミア(セイディ・スタンリー)でした。唯一心を許せるミアとの友情を育んでいた矢先、ミアの昔の恋人で、NYの空手トーナメントを制する絶対王者のコナー(アラミス・ナイト)に恨みをかってしまい、ミアも家族も巻き込む大きなトラブルを招いてしまうのです。
そんな中、ミアの父親でリーの近所でピザ屋を営む元ボクサーのヴィクター(ジョシュア・ジャクソン)は、店の借金を返すために格闘技大会への参戦を決意するものの、長いブランクを克服するためにリーにカンフーの技の伝授を依頼するのです。しかしヴィクターは初戦で大怪我を負い、店の継続もピンチになります。そこでリーはミアの力になりたいとという一心から、今度は自分がNYの空手トーナメントに優勝して、賞金を稼ぐことを決めるのでした。
しかし、そこには以前兄を失うことになった格闘することに対するトラウマと向き合う必要があったのです。またリーは自身のカンフーのスキルがまだ充分でないことを悟っていました。
そこでリーはカンフーの師匠であるハンに相談し、ハンは、ミヤギ道空手の達人ダニエル(ラルフ・マッチオ)を訪ね、リーへの助けを求めます。ダニエルから空手を学んだリーは、空手とカンフー2つの異なる格闘スタイルを武器に究極の空手トーナメントに挑みます。そこには前年度優勝者であるコナーも連覇をかけて出場していたのでした。
●解説
2010年の前作は140分もあったのに、本作は94分しかありません。なのに内容は盛りだくさんです。
北京からいきなりニューヨークへの転居から始まり、その陰にはリーの兄の死が関わっていたこと。そしてミアとの出会いはロマンスを感じさせるけれど、ミアの元彼で空手大会の優勝経験もあるコナーに因縁をつけられてしまうこと。そしてミアの父親のヴィクターにカンフーの手ほどきをして、格闘大会での優勝を目指し、その賞金で父親の経営するピザ店の借金返済を目指すというこれだけでも映画1本分に相当するボリュームがある展開になりそうです。こうしたエピソードを、モンタージュ手法の駆使で一気に展開させるところが本作の特徴です。まるでスマホで動画を倍速で見ているかのように、サマリー(要約)でつないでストーリーが進んでいくのです。そのため説明不足となるシーンも多々出てきます。
まずはリーがトラウマを乗り越え、格闘の世界に戻ってくるきっかけとなるヴィクターがなんで闇金みたいなところから金を借りなければならなかったのか、ヴィクターの苦境が見えてきません。
そしてリーが空手トーナメントに出場する展開も、かなり強引な力業で急展開します。そして出場に向けて、北京にいるはずのハンに相談したら、ハンが夜、リーの家にこっそり忍び込んで、真っ暗な部屋でいきなりリーに殴りかかってくるというサプライズが描かれるのです。これも不可解なシーンですが、もっと不可解なのがその後ハンは、リーの家の居候となり、リーの母親ともまるで家族のように語り合っているのです。ハンと母親の間は何か関係ありそうだなと思っていたら、WIKIの説明に叔父と姪っ子の関係と書いてありました。だからあんなサプライズがまかり通ったようなのです。でも劇中ではハンと母親の間柄は一切触れられませんでしたから、不可解に感じたのです。これも尺が94分しかないからでしょうか。
加えてダニエルをコーチに招く件も、話は急でした。ダニエルはコーチを断ったのに、いつの間にかニューヨークに現れてしまうのです。しかもハンの誘い方が「ニューヨーク来る? 楽しいよ〜」という軽いのりで、対するダニエルも「来ちゃった」という軽いノリで、いつの間にかふたりはなんとなく合流してしまうのです。
ふたりが一緒にリーを指導するというのが本作のキモとなるモチーフなのだから、もう少し丁寧に描くべきでした。
●感想
いろいろ駄目だしを指摘してしまいましたが、それでも本作がいいと思ったところは、ヒューマンで人生が肯定的に描かれるタッチです。ヴィクターのピザ店で、みんなが揃ってピザを食べるくだりはほのぼのとさせてくれます。またリーがトラウマを乗り越えて、格闘の世界に戻るまでの葛藤も共感できました。さらにリーとミアがニューヨークの街を50ccバイクで走る場面では、青春のきらめきを感じさせてくれたのです。
そしてジャッキー出演作品で欠かせないのが、随所にちりばめられたコメディタッチなやりとりです。中でもおかしかったのが、カンフーのハンとミヤギ空手のダニエルがお互いの流派にこだわりリーを取り合うシーン。取り合いの中で双方から技をかけられっぱなしのリーが悶絶するところがおかしかったです。
アクションシーンも本格的。特にジャッキーが久々にカンフーを披露してくれたのには感激しました。
まぁ違う見方をすれば、94分という短い時間でサクッと楽しめる楽しめるでしょう。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。