「レジェンド共演を“成立”させるための苦肉の策」ベスト・キッド レジェンズ 基本的に映画館でしか鑑賞しませんさんの映画レビュー(感想・評価)
レジェンド共演を“成立”させるための苦肉の策
ジャッキー・チェンとラルフ・マッチオを同じフレームに立たせるために作られた――と言ってしまえば冷酷だが、実際にスクリーンを見れば、そう言わざるを得ない。
物語の骨格は1984年のオリジナル『ベスト・キッド』を踏襲する。新しい土地に来た少年が孤立し、いじめられ、師と出会い、修行を積んで大会に挑む。違いは、主人公リーがすでにカンフーの基礎を持っていること。ゼロからの成長ではなく、流派の違いを超えた「統合と自己確立」がテーマに置かれている。
ただし、「ニューヨーク全体から集まる巨額の賞金大会」という設定の割に、描かれる大会規模は驚くほど小さい。出場者はわずか、会場の熱気も薄く、設定と描写がかみ合っていない。『コブラ会』でお馴染みの“非道教育”のような説得力ある悪役も存在せず、敵は等身大のライバルにすぎない。ところが試合後、突如として複数人がリーを襲撃する。あまりに唐突で、物語的には破綻気味だ。
しかし、このご都合主義こそが本作の核心である。師匠であるダニエル(ラルフ・マッチオ)とミスター・ハン(ジャッキー・チェン)が並び立ち、敵をいなす“夢の共闘”を成立させるための舞台装置だからだ。これは脚本の必然性ではなく、ファンサービスの必然。40年待った観客が見たいのは、細部の整合性よりも“レジェンド二人が肩を並べる瞬間”に尽きる。
そして物語の幕が下りた後、最後にもう一つのサプライズが用意されている。かつての宿敵ジョニー・ローレンス(ウィリアム・ザブカ)がミヤギ道場に現れ、ダニエルと顔を合わせるのだ。少年時代から因縁を抱え続けたライバル同士が、今では苦笑いを交わしながら談笑する。その姿は、ファンにとって「戦いの先にある和解」と「物語世界の終着点」を象徴するものだった。
結果として『ベスト・キッド:レジェンズ』は、映画作品としての完成度は決して高くない。大会規模の不自然さや敵役の弱さは批判を免れない。しかし、“レジェンド共演”と“宿敵との再会”という二つのご褒美を与えることで、観客はスクリーンを出るときに不満よりも感慨を抱く。
つまり本作は、映画としての論理性を犠牲にしてでも、40年のレガシーに区切りをつけるための苦肉の策だった。粗を承知の上で、それでもなおファンを泣かせる仕掛けを成立させた時点で、観客は敗北しているのである。
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