「karateではなく空手」ベスト・キッド レジェンズ 蛇足軒妖瀬布さんの映画レビュー(感想・評価)
karateではなく空手
近年の大作映画は、
クライマックスの後にも、さらに波乱を重ね、
余韻よりも情報量で観客を圧倒する傾向にある。
だが本作は、あえてその流れに逆らうかのように、
核心となる〈気配〉だけを残して潔く幕を下ろす。
その終わり方には、シリーズを通じて確立された世界観と、
登場人物(本作で出番は無かった人含)への揺るぎない信頼感がにじむ。
いわば、これは王道物語が見せる〈横綱相撲〉の構えだ。
〈気配〉を匂わせながらも、
今作単体としての物語の円環を美しく完結させている。
物語の中盤、ジャッキー・チェンはこう語る。
「リーには、ニューヨークの〈karate〉を習わせたくない。
〈ミヤギ空手〉を学ばせたい」と。
その一言は、単なる流派の違いを超えた、
カンフーと空手と武道観と人間形成の哲学の対比を浮かび上がらせる。
このセリフに込められた想いと、
物語を通して醸成された〈気配〉だけで、
満足を得る観客も少なくないだろう。
激しいアクションや過剰な感情表現に頼らず、
静かな情熱と信念で勝負する。
それはまさに、
〈空手に先手なし〉
ミヤギ先生の、型を貫く者たちの美学そのものだ。
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