「過去作のレガシーを食い潰してしまったとしか思えない」ベスト・キッド レジェンズ tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
過去作のレガシーを食い潰してしまったとしか思えない
ノリユキ・パット・モリタやジャッキー・チェンら、レジェンド達の遺伝子を受け継いだはずの映画なのに、少しも胸が躍らないのはどうしたことだろう?
映画が始まって、てっきり、主人公がレジェンド達からカラテの指導を受けるのだろうと思っていたら、母親からカンフーを禁止された主人公が、ガールフレンドの父親にボクシングの指導をするエピソードが延々と続いて、「えっ、こんな話だったの?」と面食らってしまう。
主人公がカンフーを禁止されたのは、そのせいで兄が死んだからなのだが、その原因が、試合中の事故などではなく、試合に負けた相手選手による仕返しだったという設定も、余りにも非常識で、「そんな社会情勢なら、おちおちスポーツの試合になぞ出られないだろう」と突っ込みたくなってしまう。
ボクシングの大会に出場したガールフレンドの父親が、反則によって負けた後に、いきなり、主人公がカラテの大会に出場することになる展開にしても、父親の敵討ちのためなどではなく、単に賞金を稼ぐためという動機には呆れてしまうし、エモーショナルな盛り上がりに欠けると言わざるを得ない。
ニューヨークで行われるカラテの大会に、それほど大きな重要性や緊急性が感じられないのに、中国やロサンゼルスから、わざわざジャッキー・チェンやラルフ・マッチオが駆け付けるくだりも不自然だし、わずか1週間程度の特訓だけで、主人公がカラテをマスターしてしまったり、あれだけ反対していた母親が、なし崩し的に大会への出場を容認してしまったりする話の流れにも、何だか拍子抜けしてしまった。
車を磨いたり、壁にペンキを塗ったり、あるいはテニスボールを使ったりといったユニークな練習方法は、このシリーズの名物と言っても良いだろうが、今回は、地下鉄の自動改札機を使った練習が、それに該当すると考えられるものの、特に、自動改札機でなければならないという必然性が感じられないし、何よりも、この技で決着がつくということをネタバレしてしまっているのは、作劇上の失敗であると考えざるを得ない。
ジャッキー・チェンとラルフ・マッチオによる特訓の過程にしても、二人がかりで主人公をいたぶっているようにしか見えず、これで、尊敬とか信頼とかの「師弟の絆」が育まれるのだろうかと心配になってしまった。
クライマックスのカラテの試合のシーンでは、アクロバティックな技の連続に目を奪われるものの、その分、「本物」の迫力が損なわれてしまったとしか思えないし、主人公が、兄の死のトラウマを乗り越えるシーンにしても、表面をなぞっただけのようなお粗末な描写しかなく、掘り下げ不足の感が否めない。
エンディングでは、「コブラ会」の彼が顔を出すというファンサービスもあるものの、結局、過去作のレガシーを活かすどころか、むしろ、それを食い潰してしまったとしか思えなかったことは、残念としか言いようがない。
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