「激痛注意のR指定」Mr.ノボカイン 猿田猿太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
激痛注意のR指定
その手のマニアの人向けでしょうか。ソウシリーズに負けないくらいの激痛・流血シーンの連発で、どうにもマイナスポイントを付けざるを得ない。ただ、救いがあるとすれば、当の本人は不感症のため平気な顔。いやでも、血なまぐさくて気持ち悪い。
でも、心まで不感症な訳じゃ無い。冒頭で、そのことを絵として見せているのが好感。難病のために孤独な生活を余儀なくされた主人公。子供の頃から病院通いというから、友達なんて出来ないでしょう。いやまあ、虐められていたみたいだけど、食事が合わせられないんじゃ人付き合いは難しい。デート=お食事は避けられないものですよね。
そんな孤独な身の上を平気と思ってたんじゃ物語は始まらない。妻を失った老人に共感するのは、自分も身に覚えのあることか。そういえば、今現在はご両親と一緒じゃないのか。独立心が無ければ人は育たないという方針にしても、連絡を取り合うシーンぐらいはあっても良いものなんですが。
そんな彼を引っ張り出したヒロインに夢中になるのは、そりゃあ仕方の無いことでしょう。トントン拍子で親密になり、そんな彼女の命の危機とあれば、猛然と奮い立つしか仕方ない。
当然、体の特性を生かした戦いがスタートするんですが、そりゃあもう痛々しくて仕方ない。殴られても刺されても撃たれても平気な顔をしてはいるけど、おいおい、あんたは別にスーパーマンじゃないんだ、死んだことにも気づけない体なんだぞ、と心配で心配で仕方が無い。
それでも彼女のために戦うことを止めない、警察に止められ、自らも犯罪者になろうとも突き進む彼の姿に、やっぱりあんたはヒーローだよ、と讃えたい。そんな彼の心に共感し見逃す警官(刑事?)も、自分の娘への想いがあるから。痛みの共感。これも人間が共生する生物の大切な機能というところでしょうか。
登場人物の人物像も読み解いてみるのも面白い。主人公、痛みを感じないとはいえ、他者への気遣いや撃たれた人を見捨てず処置するあたり、自分自身が治療を受けてきたこともあるでしょうし、ご両親の愛情の賜物なのでしょうか。人当たりも良く、外出できないことが功を奏して読書の日々を送った成果で知識十分。強盗集団を相手に知性の技を生かして戦うあたり、マクガイバーや逃亡者の医師のようにテクニカルで面白い。
手掛かりを掴むための伏線、自分で体の彫ったタトゥーも、自分の内面にくすぶっているものを虱潰しをしているみたいな彼の内情、そういう話あるよね、とか云いたくなる。
えーと、漫画「東京喰種」の登場人物、鈴屋什造君もそのケがありましたね。彼の場合、自分の体に縫い物をして絵作りをするんでしたか。彼同様、自分の体を傷つけてもなんともないから、そういうことが子供時代の遊びになってしまう。「痛いの平気」って属性だけじゃない、ちゃんと深掘りして人物設計がされていると興味深くなる。
強盗集団も良いですね。主人公が最初に下した弟はトラップマニア、その兄は拷問マニアとずいぶん愉快な兄弟ですね。そしてリーダー格の兄と、実は一味だったヒロインの妹の関係。兄として妹を養ってきた愛情も多少はあろうとも、妹側は無理に引っ張り込まれた感じが醸し出していて、やっぱりそれが遠慮の無い射殺の行為につながっているんでしょうか。兄弟二組の強盗団、もしかしたら子供の頃から近所づきあいで悪さをしてきた悪ガキ集団だったのかな。
そして泣けてきますね。警官の娘さんからの贈り物。みんな幸せになっていく感じが素敵。で、ネトゲ友達の彼はコミカルだけど頼もしいお助けチートキャラ。他の人達と同様、彼も傷とか腫れ物がありそう。
ともあれ、ニューヒーローの誕生と云いたいところだけれど、パート2はもっと痛々しくなるのかな。そう思うと見るのはちょっと憂鬱。マニアの方は是非どうぞ。
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