「優しい嘘の輪舞」秋が来るとき さとうきびさんの映画レビュー(感想・評価)
優しい嘘の輪舞
ブルゴーニュの田舎で庭仕事や森の散策を楽しみながら静かな余生を送る老婦人の日常…
そんなイメージで鑑賞しましたが、いや驚いた。
全然そんなものではないです。
といっても、外から観た風景は冒頭に記載したとおりなのですが、老いるまでの一生の積み重ねが今であり
死が訪れるまでは今を生き続けなければならないという現実が痛いほど胸に迫ってきます。
生活の為にやむを得なかった若き日の選択がいつまでも評判としてつきまとい
娘を愛するが為の選択がかえって成長した娘を傷つけることになり
それでも、一生懸命生きている人の優しさに触れた人が良かれと思ってしたことが誰もが望まぬことを引き起こし…
主要登場人物は老婦人二人、その息子と娘と孫。
家族の誰もが誰かを傷つけないための嘘を抱えています。そして物語の進行に伴って更にいくつかの嘘が積上げられて…
嘘で塗り固めた平穏といえばそれまでですが、嘘をついてもそれぞが守りたかったものを思うと、虚構の幸福に何の意味もないとはとても言えない気がします。
勧善懲悪ではない人間性の複雑さを描くことでは右に出るものはないと常々思っているフランス映画。
ラストシーンの美しさは特筆ものです。
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