「秋深い森に静かな感情が揺れるAftertone.」秋が来るとき Sueさんの映画レビュー(感想・評価)
秋深い森に静かな感情が揺れるAftertone.
ブルゴーニュの森の近くに、ミシェルというおばあさんがひとりで住んでいました。
ある日、おばあさんが世界で一番可愛い孫のルカがやって来るというので、昼食をもてなそうと、ミシェルはお友達のマリーと森にキノコ狩りに出かけます。娘ヴァレリーとルカがやって来ますが、ヴァレリーはつっけんどん。彼女は母ミシェルが嫌いでした。ミシェルには、人に知られたくない暗い過去があったから… と物語は展開します。
ヴァレリーの突然の死に、ミシェルが余り悲しみを見せない事や、彼女の生活ぶりにそのお金はどこから来たのか、などと不自然に感じます。それでも、庭で採れた人参スープのトッピングとテーブルの上のバタールに、列車の中でミシェルが噛じるバゲットが、すごく香ばしそうで美味しそうだなと見入ります。
端正で知的な美しい青年に成長したルカと、側で不器用に優しく、ずっとミシェルを守ってきてくれた、マリーの息子ヴァンサンと足を踏み入れたブルゴーニュの秋色の森で、お迎えに来たヴァレリーに手を引かれミシェルは大往生。これで良し、これで良し、というお話でした。
しかし、フランスワーズ·オゾンは、そんなお伽話では終わらせません。人は、己を守る為に嘘をつき、良心の呵責に苛まれつつも罪を重ねて生きるのです。誰が例外でいられましょう? 私自身の今この時までを振り返っても…
教会で神父が語るマグダラのマリアの説話で始まるこのストーリーは、ミシェルならずとも、全ての女性に“罪と赦し”というthemeを深く考えさせます。
多くを語らず実態は見せず観客の感性に訴える、オゾン監督の手腕は素晴らしい。
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