「秋と謎が深まる傑作」秋が来るとき sugar breadさんの映画レビュー(感想・評価)
秋と謎が深まる傑作
フランソワ・オゾンの初期の作品群はとがってて、それはそれで好きなのですが、近年は語り口のうまさ、観るものの感情を揺さぶる手管が絶妙で、もはや名匠の名に相応しい存在です。
さて、本作冒頭にミシェルの穏やかな田舎暮らしが丁寧に描かれます。礼拝、料理、家事、親友との森の散策。ここまでで、美しい自然との調和の中での老いや孤独がテーマなのかと想像してしまいました。
ところが、娘と孫の登場により状況に変化が。穏やかな老母に対する娘の態度が相当にキツく、こちらの気持ちもゾワっとなります。不機嫌なのは娘なりの理由があり、今度は家族と親子の業の話しかと想像を働かせます。
しかし、単純にここで終わらないのがオゾンの真骨頂。中盤から後半へのミステリアスなプロットと人間の心奥をチラッと覗き見するようなアプローチに唸ります。ラストのシーケンスは絵的にもとても好きです。
ルカ役の少年も青年もドキッとするような美形でしたね(オゾンの好みなのかな)。
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