「良かれと思うことが大事」秋が来るとき tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
良かれと思うことが大事
主人公の老婦人の過去が、物語の大きな鍵となるに違いないと思って観ていたら、中盤で、それがあっさりと明かされてしまい、少し拍子抜けしてしまった。しかも、それは、「墓場まで持っていく」といった類の秘密ではなく、村人の誰もが知っているような公然の秘密なのである。
この秘密によって、それまでの娘の態度にも合点がいくのだが、幼い娘を養うための苦渋の選択だったのに、そのことで娘に毛嫌いされるようになってしまった主人公の身の上には同情せざるを得なかった。
その一方で、主人公の過去を知った孫の男の子が、初めは嫌悪感を抱いたものの、事情をしっかりと理解して、主人公を許容するところでは、思わず「なんて良い子なんだ」と感激してしまった。
主人公の娘が、自宅のベランダから転落死してからは、主人公の親友の息子が彼女を殺したのではないかという疑念が高まってくる。
この息子が、親友が「子育てを失敗した」と言っている割にはイイ奴で、主人公の家の庭を丁寧に掃除したり、孫の男の子をいじめる上級生を懲らしめたり、主人公の娘に母親を嫌うなと言いに行ったりと、非の打ち所がないような活躍ぶりで、一体どんな罪状で服役していたのだろうかと不思議になる。
サスペンスとしての緊張感は、女性警察官が、彼のアリバイ等について、主人公と孫の男の子を尋問する場面で最高潮に達するのだが、2人の回答が「優しい嘘」であったことには納得できるし、ホッとさせられた。
何よりも、「良かれと思ってしたことが裏目に出る」と言う主人公に、「良かれと思うことが大事なのよ」と応える主人公の親友の一言が思い起こされて、胸が熱くなってしまった。
淡々と進んできた物語だっただけに、最後の最後に、何か「衝撃的な事実」でも明らかになるのだろうかと期待したのだが、そうした展開がないままで終わってしまったところには、物足りなさを感じざるを得ない。
その一方で、最後まで娘との和解を願っていた主人公が、たとえ脳内現象であったとしても、それを果たせたということは、ハッピーエンドであったに違いないと思えて、少し幸せな気持ちになることができた。
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