「本作は怖いだけの恐竜映画とは一線を画するところが気に入りました。でもつい手に汗握ってしまうのがこのシリーズ。酷暑おあつらえ向きの納涼アトラクションです。」ジュラシック・ワールド 復活の大地 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
本作は怖いだけの恐竜映画とは一線を画するところが気に入りました。でもつい手に汗握ってしまうのがこのシリーズ。酷暑おあつらえ向きの納涼アトラクションです。
1993年にスティーブン・スピルバーグが生み出した第1作「ジュラシック・パーク」から始まり、これまでのシリーズ6作がいずれも大ヒットを記録してきた「ジュラシック」シリーズの通算7作目。スカーレット・ヨハンソンら新たな顔ぶれのキャストで、前作「ジュラシック・ワールド 新たなる支配者」から5年後を舞台に、新章の幕が開けました。
●ストーリー
『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』(2022年)の出来事から5年後、地球の環境は恐竜にとって生活しづらいことが発覚しました。生存している恐竜は現在、かつて豊富に生息していた環境と似た、遠隔地の熱帯地域に生息するのみとなっていました。
秘密工作員のゾーラ・ベネット(スカーレット・ヨハンソン)は遺伝子研究の製薬会社パーカー・ジェニングスのマーティン・クレブス(ルパート・フレンド)から、ある画期的な新薬を作るため、恐竜のDNAを採取する秘密任務を持ちかけられます。巨額の成功報酬に心が動いた彼女は、古生物学者のヘンリー・ルーミス博士(ジョナサン・ヘイリー)とゾーラが兄弟の様に信頼を寄せる傭兵ダンカン・キンケイド(マハーシャラ・アリ)らと共に、立ち入りが禁止されている初代「ジュラシック・パーク」の極秘研究施設が存在した禁断の島へ足を踏み入れます。
そこはかつてパークの所有者が極秘の実験を行い、“最悪の種”と言われる20数種の恐竜が生き残った、地球上で最も危険な場所でした。
彼らの目標は、奇跡的な治療効果をもたらす新薬の開発に不可欠な、ティタノサウルス、ケツァルコアトルス、モササウルスの陸、海、空の巨大恐竜3種からDNAサンプルをDNAを確保すること。彼らがこれらの特定の恐竜を狙っているのは大型の恐竜の方が巨体な分心筋も発達しており、多くの人間の命を救う薬の鍵が隠されているとしている為でした]。
ゾーラ率いる派遣されたチームはダンカンの船・エセックス号でバルバドスから東へ出港し、フランス領ギアナのサン・ユベール島に向かいます。 道中、モササウルスに襲われ乗っていたヨットが転覆した一般人のデルガド一家を助け、激しい追跡の末モササウルスからDNAの採取に成功します。しかし、サン・ユベール島近海に近づいたところで、モササウルスと共生関係にある4頭のスピノサウルスが襲撃。激しい戦いの末デルガド一家は船から投げ出されてしまい、ゾーラ達もエセックス号が岩礁に座礁してしまう形で上陸を果します。
サン・ユベール島は、かつてインジェン社が恐竜造りの研究施設として使っていましたが、密かに遺伝子操作された突然変異の恐竜の開発を行っていたのです。しかし17年前、そのうちの一体の研究中に起きたヒューマンエラーによりインジェン社は撤退、造られていた恐竜達は研究施設もろとも放棄たのですか、残された恐竜達は十数年に渡って生き残っていたのです。
ゾーラ達は引き続きDNAサンプルを得る為の任務を続行します。その中でヘンリーは、開発される新薬の特許は一企業で独占せず、全世界に無償で提供すべきではとゾーラに打ち明けるのでした。
そんな中、彼らは実験施設から脱走した突然変異の恐竜ディストートゥス・レックスに追われながらも島からの脱出を試みます。
●解説
「ジュラシック」最新作は、シリーズに親しんできた大人も満足させてくれます。「待ってました」が満載の娯楽作に仕上がっています。今回キャストを一新し新メンバーが面子を揃えて冒険の旅に出かけるというだけでわくわくすることでしょう。
舞台は前作「新たなる支配者」の5年後という設定ですが、前作を見ていなくても全く問題ありません。心奪われるスペクタクルとアクショシの連続でも理屈なく楽しめます。
序盤から、島に向かう小型船は、早速巨大なモササウルスに襲われます。命からがら島に着けば、史上最大級の草食恐竜ティタノサウルスとの出会いや、巨大翼竜ケツァルコアトルスとの命がけの戦いが待ちうけるのです。
ゾーラのチームの他にも、ヨットで航海をしていたデルガド一家も巻き込まれ、物語が複線的に展開し飽きさせません。
全編を通じて、とにかくわかりやすい、直球勝負の作品です。「恐竜王」ティラノサウルス・レックスがめいっぱい怖がらせてくれたり、狭い屋内や配管の中での恐竜との息をのむ追いかけっこが描かれたりと、「それが見たかった」を外していません。おなじみの小型肉食恐竜ヴェロキラプトルが忘れずに登場するのも、ファンにはうれしいはずです。
シリーズでたびたび描かれる、遺伝子操作により作られた架空の恐竜もパワーアップしており、今回はかなり気味が悪いのです。
作中で命を落としそうな者と、生き残りそうな者が大体わかるのも、良心的なエンターテインメントだろう。
長く続くシリーズものは、異なる方向性で意表をつくことも多いのですが、今回、脚本のデヴィッド・コープは「ジュラシック」が必ず守るべき九つのルールを決めて執筆に臨んだといいます。内容は秘密というけれど、観客を裏切らないために違いないでしょう。こだわりの元に生まれた、正統派の続編だというそうです。
エドワーズ監督は「VFXの担当者に、実際の動物を参考に恐竜のアニメーションを描くよう頼みました」とインタビューで答えています。例えばティラノサウルスがあくびをする場面はライオンを基にしているのだそうです。「習性や行動にリアリズムを加える。怪獣でなく動物として恐竜を描きました」と。むくな恐竜たちの姿に、自然と親近感がわく。その分、島に侵入した登場人物たちの身勝手さは際立つのです。
『ジュラシック』シリーズはこれまで『人間対自然』をテーマとしてきました。本作にも、自然を悪用すればしっぺ返しをくらう、とのメッセージが隠されています。
監督はこう指摘します。 「なぜ観客はそのメッセージが真実だと思うのか。それは我々のDNAに、自分より大きなものに食べられたり潰されたりすることへの恐怖が刻まれていて、『ジュラシック』を見るとその恐怖がよみがえるからなのでしょう」とのことです。
●感想
前作まで世界中を席巻していた恐竜は、地球の自然環境に適応できず、今は赤道直下の熱帯地域に存在するのみ。設定をリセットし、登場人物も一新して、旧3部作に回帰したような内容だと思います。
シリーズ初登板のギャレス・エドワーズ監督は、随所に目を見張るショットを駆使したスペクタクルを映像化。とりわけ「ジョーズ」へのオマージュを感じさせるモササウルスとの海洋チェイス、ティラノサウルスが川で猛威をふるうシーンはスリルと恐ろしさがたっぷりでした。その半面、島に偶然さまよい込んで逃げまどうデルガド一家のパートは、ちょっと余計にも感じられました。もっとゾーラたちの活躍に絞り込むべきでした。
そんな文句を言いつつ、つい手に汗握ってしまうのがこのシリーズ。酷暑おあつらえ向きの納涼アトラクションです。
●最後に一言
本作は怖いだけの恐竜映画とは一線を画するところが気に入りました。
デルガド一家の幼女イザベラに懐き行動を共にすることになる"ドロレス"と名付けられた両手で抱えられるほど小さな角竜の子どもは、どこか可愛らしい恐竜です。イザベラとじゃれ合う姿は、パニックが続く本作にあって、ほっとさせてくれる間を作ってくれました。
仲むつまじくする「夫婦」の草食獣ティタノサウルスのまったりした光景は、とても癒やしを感じさせてくれました。
またクライマックスの展開には、グッときました。あるメンバーが犠牲もいとわず巨大恐竜を引きつけて、ほかのメンバーを逃がそうと、発煙筒をもって走り出します。
失意の生き残ったメンバーの後方から、赤い発煙筒が打ち上げられるシーンには感動しました。あれきっと監督のサービスなんでしょうね。
公開日 : 2025年8月8日
上映時間 :134分
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