「手の届きそうな近未来感にワクワクしつつ、人間関係をめぐる諸々の描写になんとも言えない居心地の悪さを覚えてしまうなど、巧みに観客側の気持ちを翻弄してくれる一作」コンパニオン yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
手の届きそうな近未来感にワクワクしつつ、人間関係をめぐる諸々の描写になんとも言えない居心地の悪さを覚えてしまうなど、巧みに観客側の気持ちを翻弄してくれる一作
この映画の面白いところは何といっても、自動運転の車、先端的な携帯ガジェットなど、もうすぐ実現しそうな技術・サービスの描写を多数盛り込んで、現実との強い「地続き感」を感じさせてくれるところ。何ならもしこの世界に転生しても、わりとすんなり生活できちゃうんじゃないか、と思えるほどに。
そんな近未来世界で展開するドラマは、なんとも醜悪な欲望と打算に基づいた追跡劇。アイリス(ソフィー・サッチャー)がある事実に気が付いて「ジョシュ…」と思わず口走ってしまう場面は、本作一番のしょうもない、かつ笑える場面ではあるのですが、同時に「コンパニオン(連れ合い)にあなたが望むのは、こういうことですよね?」とドリュー・ハンコック監督に言われているような気がして、居心地の悪さを感じる人も多そう。
SFというジャンル自体、架空の設定に基づいて人間の複雑な心理の特質を小難しい説明なしに描写できる、という機能を備えているんだけど、本作はあまり話を広げすぎず、アイリスとジョシュ(ジャック・クエイド)の間の(権力/支配)関係に明確な軸を置いていることで、SF的な設定を使ってなにを描こうとしているのか、明確に理解することができます。
アイリスがどういった存在なのかは映画解説見るとすぐに分かるんで、ここで伏せる必然性はあまりないのですが、もし何も知らないで観ていたら序盤の展開にちょっと驚きがあると思うので、できるだけ事前情報なしの鑑賞をお勧めしたいところ。
それと特に『ロ〇ッ〇・〇リーム〇』(2024)に釈然としなかった人にとって本作は、描いてほしかった側面を描いている!と「刺さる」ところが多いかもしれないので、こちらの方にもお勧め。
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