配信開始日 2025年10月10日

「クリスティ風味のミステリー」第10客室の女 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 クリスティ風味のミステリー

2025年10月30日
PCから投稿

目撃者は自分だけ、のバルカン特急スタイルのミステリーだがオリエント急行やナイル川を思わせるクリスティ風味もあった。

『ウェアの犯罪小説における文体は、しばしばアガサクリスティのそれと比較される。ウェア自身、自身の作風のいくつかの側面はクリスティから直接影響を受けていると述べている。ウェアの主人公は通常、犯罪に巻き込まれ危険な状況に陥った普通の女性である。ウェアの最初の2作は、集団が閉じ込められたり、危険な環境から即座に脱出できない状況下での殺人ミステリーを題材としている。クリスティは『オリエント急行殺人事件』などの作品でこのプロット手法を駆使したことで有名である。』
(原作者Ruth Wareのwikipediaより)

The Girl on the TrainやThe Woman in the Windowなども引き合いにされており総じて人物像や出来事や展開に既視感のあるミステリーだった。出来はそれほど悪くなかった、とはいえ精彩を欠き見て直ぐにスルッと忘れる感じは否めなかった。
imdb6.0、RottenTomatoes27%と33%。

雑感だが、スリラー、ミステリー、サスペンス、冬の時代だと思う。理屈はともかく今はホラーの時代なわけである。だからホラーに一歩準じるスリラーやミステリーやサスペンスの印象が薄くなる。さいきん見たスリラー、ミステリー、サスペンス系で印象的だったのはなんだろうと思い出してみたとき鑑定士と顔のない依頼人あたりまで遡らなきゃならなくなる。時節柄ホラーならそこそこの出来でも突出できるのに、スリラーミステリーサスペンスと言ったら途端にレベルが高くなければ記憶に残らなくなってしまっている。
たとえばTi WestのX、パール、MaXXXineは悪くなかった。ただ振り返って冷静に考えてみるとホラー時流にうまく乗ったなという感じはある。じぶんも批評家たちもXパールMaXXXineを過大評価している。M3ganだってともすればチャッキーになるところをブラムハウスの最高益を稼ぐシリーズに昇格した。やはり時流がホラーに味方している。そしてこの時流を創ったのはアスターとデヴィッドロバートミッチェルのイットフォローズであり、ピールのゲットアウトからはコンペティション的過熱状態になった、と認識している。
本作だって映画として必ずしもひどいわけじゃないのに批評を著しく落としているのはミステリーだからであり、スクリプトをちょっといじってホラーにすればIMDBは7を超えトマトはRottenにならなくて済んだ・・・なんてことを漠然と思った。
また、ここのナイトレイに華は感じなかった。むしろ端役扱いだったスコデラリオと交代でもよかった気がした。

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津次郎