フランケンシュタインのレビュー・感想・評価
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どうにもならない深い哀しみ
英国の小説家メアリー・シェリー原作、ギレルモ・デル・トロ監督の本作。
エル・ファニング主演映画「 メアリーの総て 」を以前観ており、本作が気になり鑑賞。
科学者ヴィクター・フランケンシュタイン( オスカー・アイザック )は、亡骸を繋ぎ合わせ、生命を創造するという野心を抱く。
自身のルーツや存在意義に苦しむクリーチャーを身長196㎝のジェイコブ・エロルディが怪演。
クリーチャーと心を通わせる女性エリザベスをミア・ゴスが、北極探検隊の船長をマッツ・ミケルセンの兄、ラース・ミケルセンが演じる。
清らかな心、相手を許し認めるということ、人としての存在意義、突き進んで行ったその先に何が起き得るのか、生きていくということ。
クラシカルな色彩が美しい哲学的な作品。
映画館での鑑賞
【"死の克服の果て。”今作は父親譲りの傲慢な医者が生み出したクリーチャーが人間界で生きる様を通じ、本当の怪物は何か、赦しとは何かを描き出したヒューマンダークファンタジーの逸品である。】
ー 物語は、序章から始まり、父親譲りの傲慢な医者ヴィクター・フランケンシュタイン(オスカー・アイザック)の視点で、そしてクリーチャー(ジェイコブ・エロルディ)の視点で、”本当の怪物は何か、赦しとは何か”を描き出していくのである。-
<Caution!以下、内容の詳細に触れています。>
■1857年。氷に覆われた北極海で、足を怪我したヴィクターが、強引に北極点を目指しながら氷に閉じこめられていた船のアンダーソン船長(ラース・ミケルセン)達に救い出される。だが、そこに謎のクリーチャーが現れ、無数の銃弾を受けながら、船員を投げ飛ばしヴィクター・フランケンシュタインに迫って来るのである。
次に助けられたヴィクターが、自分の視点でクリーチャーが産まれた過程を語るのである。彼は傲慢な医者であった父の厳しい教えの元、医学を学んでいく。そして、父がなしえなかった死者を蘇させる実験に没頭していくのである。勿論、その根底には母を病で亡くした事があるのである。
ヴィクターは、絞首刑に処せられた罪人の死体を見分して使うのを止め、戦場で死んだ壮健な兵士の死体を使いながら、クリーチャーを生み出すのである。
その費用は、弟ウィリアム(フェリックス・カメラー)の心優しき婚約者エリザベス(ミア・ゴス)の叔父ハーランダー(クリストフ・ヴァルツ)が担っていたのである。
だが、ハーランダーは、自身が梅毒末期になっていたために、自分の身体をクリーチャーとして生きさせる事が、ねらいであったのである。だが、彼の目論み通りには行かずに彼は実験城内の廃棄物を捨てる穴から転落死するのである。
次にクリーチャーの視点で物語は紡がれるのである。
それは、彼は生まれてから”ヴィクター”としか声を出せなかったが、自分を人間として見てくれたエリザベスと出会い、”エリザベス”と声を発した事。だが、ヴィクターは自分を失敗作として、実験城を焼き払うが自分はギリギリ脱出し、ある猟師家族の盲目の老人と孫娘の会話から知を得、心優しき盲目の老人が勧めてくれた、ミルトンの”失楽園”などの書物を通し更に知を深め、猟師家族の為に羊の柵を作ったりして恩返しし”森の妖精”と呼ばれながらも、自分の姿を見た猟師家族たちに撃たれた事。
そして、蘇生した自分がウィリアムとエリザベスの結婚式の会場に行った際に、自分を庇ったエリザベスを、ヴィクターが誤って撃ち殺してしまい、自分はその為にヴィクターを、地の果てまで追って来た事を告げるのである。
◆感想
・今作は、従来のフランケンシュタインの物語を、ギレルモ・デル・トロ監督が見事にアレンジメントを施したヒューマンダークファンタジーになっている点が、素晴らしいのである。
・そこでは、父親譲りの傲慢な医者ヴィクター・フランケンシュタインが、母の死を防げなかった父を見返すために、死者を蘇らせる実験が生々しく描かれているのである。
そして最初は只のクリーチャーだったのが、心優しきエリザベスと出会い”人間の優しさ”を学び、猟師家族の盲目の老人からは、更に”知””と生きる価値”を学んでいく過程が描かれて行くのである。
■クリーチャーが地の果てまでヴィクターを追って来る姿を描いた序盤では、彼は怪物として描かれるが、クリーチャーが語るパートでは彼は優しさと知を得ており、顔付も優し気なのである。この構成とクリーチャーの成長過程の描き方が、実に上手いのである。
クリーチャーは、ヴィクターに”伴侶が欲しい。”と願いながら拒否され、エリザベスを誤射した彼を追って来る。だが、クリーチャーが彼を追って来た本当の理由が分かる再後半のシーンは、実に沁みるのである。
クリーチャーはアンダーソン船長の甲板から、ヴィクターが養生している船室に入って来て、上記の自身の物語を語るのである。
それを聞いたヴィクターは、涙しながら”私が間違っていた。許してくれ、息子よ。”と言い、クリーチャーはその言葉を聞き、優しい表情で”赦します。”と答えるのである。
その言葉を脇で聞いていたアンダーソン船長は、船員達に”彼を撃つな!”と指示し、クリーチャーは氷原に降りて、氷に閉じこめられていたアンダーソン船長の船を怪力で動かし、船長はそれまで、頑なに北極点を目指していた姿勢を翻し、船員達に”故郷に戻るぞ!”と告げ、船は氷のない洋上に出て行くのである。
<今作は父親譲りの傲慢な医者が生み出したクリーチャーが人間界で生きる様を通じ、”本当の怪物は何か、赦しとは何か”を描き出したヒューマンダークファンタジーの逸品なのである。>
どちらが怪物なのか?
正直、ファンタジー系はあまりみないジャンルなんやけど、ハウスオブダイナマイトの時に予告で心惹かれたので期待値高めで観に行った。
死者を生者にすることに取り憑かれた男。実験はうまくいくものの生み出した後のことを考えておらず…
タナトフォビア(死恐怖症)という言葉もあるが死ぬことに対して恐怖心を持っている人間は多い。というよりほとんどの人が少なからず恐怖心を持っているのでは?未知のことに対して恐怖心を抱くのは生存本能もあるんやろう。わからないことを知りたいと思い探究し続けるのは自然なことかもしれない。
様々な死体を組み合わされ出来上がった怪物は、心もリセットされ誰よりも純粋で思考する人間より人間らしい存在となった。一方のヴィクターは父が自分の一部であった母を殺した(疑惑ではあるが)という事実により人間という生き物に期待しなくなった。皮肉にも人間を信頼していない人間から純粋な怪物が生まれたのである。
伴侶がほしいと訴える彼の眼差しは胸が痛くなる。生きる意味とは?死からの復活は果たしてその人の尊厳を傷つけることにはならないだろうか?そんな倫理的な問題にまで踏み込んで描いた力作。ギレルモ監督の作品は異形のものはただ気持ち悪いものではなく、意思を持っている純粋で優しい存在として描かれることが多い。ルッキズムへの警鐘もあるのかな?
余談やけど、本作のミアゴス…眉毛があった!!パールからの振り幅!やっぱり好きな女優さんやわ〜
すごく面白い
博士が「作った後のことなんて考えてなかった」とフランケンを持て余すのがひどい。でくの棒だったフランケンが盲目のおじいさんとの交流で次第に賢くなっていくと同時に、アイデンティティについて思い悩むのが悲しい。
そして死ねずに悩むのだけど、大量の爆弾で木っ端微塵にするか、ガソリンを被って燃やし尽くすなどして再生不能にすればいいのではないだろうか。
片足になった博士が俄然やる気を出して武器を買いそろえるのは、どうしたことかと思うし北極まで行くって、どうしたことか。
別にいろいろな死体を切り合わせる必要はあるだろうか。死人をよみがえらせるだけでも充分ではないか。せいぜい別の死体の心臓を移植するとか。
あんなに仲が悪かったヴィクターとフランケンが和解する場面は感動した。
善き人へ幸せを
ギレルモ・デル・トロ監督作品は『パシフィック・リム』しか観ていない不勉強な者ですが、この監督の印象はとにかく凝り性な人だな、という事。本作も良い意味でその凝り性が発揮されていたように思います。
冒頭の氷に閉ざされた船からラストまで、自分があたかもその中に存在しているようなリアルな画面作りにずっと引き込まれていました。
愛する母を早くに亡くし生に執着するヴィクター、そのヴィクターの手で生み出されたクリーチャー、創造主とクリーチャー、憎しみと愛情が合わさった危うく複雑な関係は、美しくも何処か少女のような純粋さと残酷さを持つエリザベスの存在によってバランスを崩し、一気に不幸の道へと突き進んでいきます。
それでもクリーチャーは森に住む老人からソウルフレンドとしての愛を、エリザベスから心の空白を埋め求め合う存在としての愛を注がれたその刹那が幸せと悲しみの感情を知った時だったのでしょう。
最後は創造主を許し、一人冷たい北の国の氷の中を彷徨い続けるクリーチャーに幸あれと願わずにはいられませんでした。
この作品を配信で終わらせず劇場公開してくださったことに感謝です。
次は狼男
何度も映画化された題材だが、ギレルモらしい演出で新鮮だった。
●グロテスクをキッチリ映像化しているのがギレルモらしくて良かった。
●フランケンシュタインがエキセントリックなキャラクターで良かった。傲慢な科学者としての描き方が真実味を出していた。
●モンスターの哀愁もきっちり描けていた。守ってやりたくなるように感じさせる。
●ラストが晴れやかなのは予想外でスカッとした。陰鬱になりがちな古典ホラーを人情ドラマとして着地させたのはさすがだと思った。
半魚人もやったのだから次は狼男をやってほしいな。
本番は第二章から…
1日一本だけの限定上映、いつ終わるか分からないので、すぐに行ってました! 寝不足のせいか一章まではちょい眠む… しかし! 第二章からがこの映画の本番です!
いやちょっと涙が出ました… 明日からも力の限り生きていきます!
一章までは星3つ、二章は星5つという事で星3.5です!
(計算が合わないのはご愛嬌…)
倫理観ZERO&狂気に満ちたフランケンシュタイン
オスカー・アイザック演じる主人公ヴィクター・フランケンシュタインの
倫理観ZERO&狂気に満ち満ちた迫真の演技で引き込まれた。
ギレルモ・デル・トロらしく、怪物の造形や人の死体の描き方など、
本当に気持ち悪くて、これは見るに耐えない人もいるに違いない。
このあたりはホラー映画に近い見せ方&造形で見どころでもあると思う。
しかし、好きで生まれたわけではない”怪物(ジェイコブ・エロルディ)”の悲しさ、
せつなさ、心優しさ、純粋さ、ラストはちゃんと創造主としてのヴィクターを
リスペクトする&船を出向させるのに力を注ぐ怪物の姿勢に心を打たれた。
私の推しであるミア・ゴスのエリザベスもなんと悲しい存在であることか。
エリザベスが怪物と心を通わせるところはグッときた。
エリザベスが怪物の伴侶となることができれば、ハッピーエンドなのだろうが、
そう簡単ではないし、ヴィクターはそのつもりはなかった(そりゃ当然だろうが)。
実に悲しい話だが、鑑賞後感はすごく良かった。
149分の長尺でありながら、長いと感じることはなく、最後まで一気に集中して
観ることができた。
怪物のセリフ「お前を許す」は至言。
Netflix作品なので近々配信されるものの、
やはり劇場のスクリーン&音響で観ることで、映画体験は一段クオリティが上がると思う。
監督のクリーチャー愛爆発。
ネトフリに加入してるけど気になったから劇場で鑑賞。
原作の内容をかなり変えてるけど基本プロットは守ってるからノスフェラトゥみたいになんじゃこりゃ?って気分にはならなかったな。
フランケンシュタインの身勝手さが拡張される反面、原作と違い不死身だったりエリザベスに好意を持たれたり盲目の老人と幸せで安らかな生活を送る時期が有ったりと監督のクリーチャー愛が爆発してるのがよく分かる。
ラストはフランケンシュタインとクリーチャーが許し合って和解して原作の互いに分かり合えず許し合えもしない悲劇のラストが無効になる展開は自分として有りだと思ったけど人によっては賛否がかなり別れるかも。
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