「人は自身の生も死も決められないけど、赦しは選択できる」フランケンシュタイン とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)
人は自身の生も死も決められないけど、赦しは選択できる
憎しみに愛、無理解に友達、孤独に生命、そして赦し…。人間の醜さや世界の無情さをこれでもかと描きながら、なおもその中にある美しさに目を向けるような、多くの悲しみの中の一筋の光のようなかすかな希望を信じ続ける
ヴィクター!"それ"を創ったら終わり…?だが終わらなかった"怪物"=オスカー・アイザック✕ジェイコブ・エロルディ、生を目指して死を創った創造主と怪物の仁義なき戦い?憎しみに晒され、世界に溢れた暴力を知り、愛に触れ、そして赦しを試される孤独な人生の旅路。誰しもが心に孤独の怪物を飼っていて、死は時として癒しにもなりえる。
一貫した作家主義で、しっかりと人間が描かれていた。おかげで僕らは"怪物"に人間性を見出だせる。『パンズ・ラビリンス』でも『シェイプ・オブ・ウォーター』でも、彼の作品で一番醜いのはいつだって人間のほうだ。知性は?心や魂はどこにあるのか?壊れても、壊れたまま生き続けないといけないから、忘れて赦したほうが自分のためにもいい。ジェイコブ・エロルディのクリーチャー役くらい珍しい、通常運転が狂気のホラークイーン=ミア・ゴスの善良キャラ(失礼?)で、三角関係。デル・トロの作品愛に応えるようなエロルディの傑出した演技から、息を呑むように余韻のある命を讃えるような完璧なラストカット(今年観てきた映画の中で一番だったと思う)まで、実に壮大かつ雄大で雄弁な、深く美しい物語だった。時を超える本当の「映画」を観たなという充足感たるや…。
異型(モンスター/怪物)を描き続けるデル・トロの原点を観た!オスカー受賞した傑作『シェイプ・オブ・ウォーター』以降、『ナイトメア・アリー』、『ピノッキオ』(またもや"クリヴァル"クリストフ・ヴァルツ)そして本作と、近年は自身が影響を受けた古典の再映画化に挑んでいる我らがデル・トロだけど、そのいずれも持てうる限りのリスペクトと愛を込めて映画化しているのが素晴らしい。やはり彼の作品には、古き良き壮大なロマンを感じずには居られない!【デル・トロの"原点三部作"】と呼ぼう。映画とは人生だ!!
エロルディは、『プリシラ』ではかのエルヴィス・プレスリーを演じて、本作では怪物を演じて、まだ二十代の彼に演じられないものはないのかと思うような、身長含めて必然のキャスティング(古典という意味では『嵐が丘』も楽しみ!!)。本当に彼はシャラメやオースティン・バトラーと並ぶ、これからのハリウッドを担う若手スター。本作のレッドカーペットやプロモーションでは兄弟のように仲良さそうな様子を見せている主演2人だけど、親子・父息子の物語でもあった。
