「クローゼット大好き幽霊ちゃんの、崩壊寸前ファミリーを愛でる映画でした」プレゼンス 存在 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
クローゼット大好き幽霊ちゃんの、崩壊寸前ファミリーを愛でる映画でした
2025.3.11 字幕 MOVIX京都
2024年のアメリカ映画(84分、PG12)
ある一家が訳あり物件に移住する様子を描いた幽霊目線のスリラー映画
監督はスティーヴン・ソダーバーグ
脚本はデビッド・コープ
原題の『Presence』は劇中では「存在」と訳されている「幽霊的な物体」を指す言葉
物語の舞台は、アメリカの閑静な住宅地のどこか(ロケ地はニュージャージー州クランフォード)
ある物件の内観に訪れたペイン一家は、不動産屋のシーシー(ジュリア・フォックス)から、「最近、住人が引っ越したばかりの掘り出し物」だと説明される
アンティークの家具が置かれ、暖房器具が設置されていた物件は、母レベッカ(ルーシー・リュー)の一言で決まってしまった
夫のクリス(クリス・サリヴァン)は、妻が何かしらの金融詐欺に加担していると疑っていて、友人たちに「自分に影響があるか」などと相談していた
離婚を前提に関係性の見直しを考えているものの、長男タイラー(エディ・マディ)は水泳部のホープで、妹クロエ(カリーナ・チャン)は親友を亡くしたばかりで不安定な時期だった
クロエに対する接し方もクリスとレベッカは正反対で、「時間が必要」というレベッカに対して、「それは放置しているのと同じだ」と憤った
物語は、内観の段階から家に何かを感じているクロエを描くのだが、最初から最後まで「存在」目線に固定されている
いわゆる幽霊的なものの視点によって家族を見ているというもので、その存在に気づいているのがクロエだけという構成になっている
クリスは心配性ゆえに色んなところに相談をし、シーシーは知り合いの「視える人」を無理やり派遣してしまう
霊媒師的な存在であるリサ(ナタリー・ウォーラムス=トレス)には何か見えているようだが、それを理解できているのはクロエしかいない
元々は無償で見てもらう予定だったものの、リサの夫カール(Lucas Papaelias)に少し言われただけでお金を払ったりしていた
お金に細かいレベッカはそれが許せないのだが、それだけでは家族崩壊には至らなかった
映画は、タイラーの友人ライアン(ウェスト・マルホランド)が登場したあたりからおかしな空気になっていく
ライアンは友人の妹に手を出すロクでもない人間で、クロエの亡くなった友人たちをジャンキー呼ばわりしていた
実際に薬物使用の異常行動が原因だとされてはいるものの、デリカシーのなさというところは救いようがない
それでもクロエはライアンを気に入って大人の関係になろうとしていて、それを阻もうとするのが「存在」だったりする
結局のところ、存在にできることは限られていて、クロエはライアンとセックスをするし、タイラーはあっさりと睡眠薬で眠らされたりする
だが、タイラーが目覚めてライアンの蛮行を知った時に決定機が訪れ、それによって一家はこの家を出ざるを得なくなってしまう
それが「存在」が望んだことかはわからないが、あの家に住めるのはクロエぐらいなので仕方ないのかもしれない
いずれにせよ、ホラー映画と言うよりは、幽霊目線による家庭崩壊を目の当たりにするスリラーのような印象があった
存在はクロエを助ける方向に向かうのだが、クロエは存在を友人のナディアだと思い込んでいる
だが、おそらくは地縛霊のようなもので、これまでの住人の誰かがそこから出られなくなったと言うものなのだろう
窓を開けない家というワードがあり、どの部屋もほとんど窓を開けないのだが、唯一開いたのがタイラーとライアンのダイブになっていた
それによって何らかの流れが起こったのかはわからないが、存在は正面玄関から抜け出して召されたように描かれている
成仏したのか、別の家を探しているのかはわからないが、もしかしたらクロエの行くいって先々に現れてしまうのかな、と思った