「主人公のキャラクター設定が疑問」ぶぶ漬けどうどす 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
主人公のキャラクター設定が疑問
「嗤う蟲」で初めてお目に掛かった深川麻衣主演作品でした。というか、同作で彼女の夫役だった若葉竜也と、隣家の主婦役だった片岡礼子も出演しており、キャスティングが結構重なっていました。内容的には、「嗤う蟲」はホラー、本作はコメディなのでジャンルこそ異なっていましたが、東京から地方(京都を地方と言って良いかは微妙ですが)に移り住んだ深川麻衣のお話という点では、全く同じ構図であるのも面白い共通点でした。
お話としては、 井上章一氏が著した「京都ぎらい」を思い起こさせるものでした。本音を言わない”いけず”な物言いをはじめ、洛中と洛外の精神的分断とか、”まだ百年しか経ってません”みたいな、へりくだっているようでいて暗に”歴史”を誇示するところなど、吾妻人が持っている京都のイメージを利用して物語を組み立てたのは面白い着想だったと思います。また、ガスじゃなくて薪でご飯を炊く伝統家屋に住んでいる洛中在住のばりばりの京都人が、実はマンションに住みたがっていたなんていう展開も、結構真実なんだろうと想像できて興味深いところでした。
ただ、深川麻衣演ずる主人公の澁澤まどかのキャラクター設定が、どうにも馴染めなかったのが残念でした。16世紀から13代続く扇子屋の14代目と結婚したまどかでしたが、京都を題材とした漫画制作のために夫の実家を中心に京都を取材することに。そんな彼女は、全く周囲の空気を読まず、相手の気持ちを考えない人物として描かれており、別に京都の人ならずとも嫌われる要素がタップリ。そのため、本作で巻き起こる京都の人々との軋轢の殆どが、まどか側に原因があるように思えてしまい、逆に言えば京都の独自性がそこまで際立っていなかったように感じられました。もう少し癖のない人物設定にした方が、京都の特徴をより際立たせることが出来たのではと思ってしまいました。
最後に俳優陣ですが、まどかのキャラクター設定には同意しかねたものの、深川麻衣の演技そのものは中々良かったように思いました。まどかの相棒にして作画担当の安西ちゃんを演じた小野寺ずるは、初めてお目に掛かりましたが、漫画から飛び出してきたようなキャラクターを実に上手く演じていました。また、「嗤う蟲」で深川麻衣の夫役を演じた若葉竜也も、コミカルなセリフ廻しが面白く、普段の深刻なキャラとは違って新境地を観た感じで非常に新鮮でした。
そんな訳で、本作の評価は★3.4とします。
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