「『14歳の栞』とぜひ観比べてもらいたい一作」Instruments of a Beating Heart yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
『14歳の栞』とぜひ観比べてもらいたい一作
山崎エマ監督のドキュメンタリー作品『学校 それは小さな社会』のダイジェスト版であるにも関わらず、第97回アカデミー賞短編ドキュメンタリー部門の候補ともなった本作。YouTubeなどでも無料で視聴可能であるため、『学校 』鑑賞前であれば絶好の導入部となっています。
本作は主に、公立学校に通う小学2年の生徒たちが、合奏練習をする過程をとらえているんだけど、教職員、生徒たちの姿はごく自然な学校生活そのもので、カメラを通して見ている映像であることを忘れそうになるほど。
映像はあまりにも「日常」そのものなので、人によっては作品のテーマがつかみきれず戸惑ってしまうかも。
すでに『14歳の栞』(2021)という、テーマも作風も、そして舞台もよく似通った作品が存在するため、そのあまりにも距離感の近い描写に新鮮な驚きを感じる、というまでには至らなかった…、のですが、個人情報の保護という認識が社会的に高まっている昨今、とりわけ公立学校という、その種の問題に細やかな配慮が必要な機関において、本作の製作スタッフは事前にどれだけ関係者、生徒、そして生徒の保護者と交渉を重ね了解を取っていったのか、そして約150日の取材撮影中、おそらく当初はカメラを強く意識していたであろう生徒たちにどのように溶け込んでいったのか、その取材過程こそむしろ映像化してほしいと思う作品でした。
前述の『14歳の栞』は、当時中学生だった個々人が実名で登場するため、現在でも巡回上映という形式でのみ鑑賞可能ですが、もし機会があれば、ぜひとも両作鑑賞して、観比べてもらいたいです!
本作のタイトルは作中で生徒たちが交わす会話に基づいているんだけど、そのやり取りはとても味わい深いので、こちらもぜひ直接ご確認を!