「今を愛し、誰かを愛するフランス節」ファンファーレ!ふたつの音 うぐいすさんの映画レビュー(感想・評価)
今を愛し、誰かを愛するフランス節
兄の病気をきっかけに再会した、お互い存在すら知らなかった生き別れの兄弟のぎこちない関係を、共通の関心である音楽が埋めていく物語。
個人的にフランス映画という括りではミニシアター系の捻った作品を観る機会が続いていたせいで、最初はこの作品のノリに戸惑ってしまった。エピソードのデティールが疎かだったり、湿っぽい部類の感情に踏み込んだ次のシーンではわだかまりが解消していたり、物語の起伏を大きくするために描写が雑になる朝ドラ的なノリである。
フランスのヒューマンドラマ映画と言えばこうだったな、というのを思い出した作品だった。悲しみも怒りも尽きない生活ではあるけれど、隣人を大事にし、暮らしの中に楽しみを見出し、恋をして、人生を豊かにしようとするタフな明るさを持った普通の人たる登場人物たちが眩しい世界観である。ティボとジミーの物語であると同時に、普通の人であるジミーと仲間たちのささやかだが眩しい暮らしを、ティボの目で見守る物語でもあった。
ティボがジミーを見つめる眼差しの変化、ラストでジミーがティボを見つめる視線の力強さが印象的な作品だった。
身構えて観てしまった初見の記憶を消して観なおしたい。
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