劇場公開日 2025年11月28日

「「アンリ・ルソーの『夢』の中の“楽園”と『チェーホフの銃』」」ナイトフラワー ひなさんの映画レビュー(感想・評価)

未評価 「アンリ・ルソーの『夢』の中の“楽園”と『チェーホフの銃』」

2025年12月15日
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鑑賞方法:映画館

冒頭のシーン。スナックのトイレの壁に飾られた、アンリ・ルソーの『夢』という名の絵画。
ルソーは生涯フランスから出ることはなく、晩年に「楽園」を描いた最後の作品。

夏希(北川景子)の働くスナックの名前も「楽園」。夏希がトイレで眠って夢を見ているシーンで、最初に感じた“予感”は映画の最後でほぼ確信に変わりました。

この映画のあるレビューのタイトルに、「貧困ポルノ」という文字を見かけました。
公式Xがシングルマザーの貧困と犯罪の映画の「考察」をどれだけ煽ったとしても、映画がコケるよりはヒットしてほしいと思います。

弁護士と福祉行政職の知人2人から、教えてもらった話です。
役所の相談窓口に行けば、負債については自己破産、弁護士費用の免除、そして生活保護の支給額は現在は年金を上回ること…

日本の「貧困」は、雨風がしのげる家に住めて、ご飯が食べれて、お風呂に入れて、スマホも持てる国のそれだそうです。(『爆弾』のタゴサクです)

映画が「大きな嘘」だとしたら、そのための「小さな嘘」は上手についてほしい…
きっと誰にでも経験があると思いますが、映画を観ながら時折心が物語から離れていく、そこが残念な作品でした。

✎____________

今日は第50回報知映画賞の受賞式。
主演女優賞に北川景子さん、助演女優賞に森田望智さん。

11月末公開の映画が受賞という、1年前に『正体』が受賞した時の“違和感”を思い出しました。
『正体』は小説の原作者が主人公に同情する程のバッドエンドを、映画では冤罪ものの美談に改変していました。

『ナイトフラワー』は母と子の泣ける愛情物語で終わらせなかったという点で、救いがなくても映画としては好きです。
でもさすがに内田英治監督が好きだと言う「アメリカン・ニューシネマ」のバディものとして、この映画を観るのはムリがありました。

『愚か者の身分』と比較する声もありますが、『愚か者』が今年No.1と思えるのは、ラストに“感じる”一筋の希望の光です。
そして歌舞伎町の半グレの末端が主役の物語なのに、女性に対する暴力と性的搾取の描写が無いこと、これは女性監督&女性原作者の視点だからこそだと思いました。

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【北川景子さん】
妄信的な愛情故に道を踏み外す母親の役は、北川さん自身が母になって、大河ドラマ「どうする家康」のお市の方から4作目。
個人的には代表作の「家売るオンナ」が好きです。

【森田望智さん】
『全裸監督』「虎に翼」『ナイトフラワー』。
ここまでのカメレオン女優さんだとは予想を超えていて、河合優実さん以来の衝撃でした。

【渋谷龍太さん】
SUPER BEAVERの愛すべきフロントマン、“ぶーやん”。
今年は『愚か者の身分』の林裕太さんと、渋谷龍太さんに新人賞をあげたいです。

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12月1日日映画館で鑑賞
12月15日☆☆☆☆☆評価(★対象外)
12月15日レビュー投稿
12月16日レビュータイトル編集

ひな
月光仮面さんのコメント
2025年12月17日

ひな様、こんばんは。「国宝」で情報頂いたひな様ですよね…共感&コメントありがとうございました。私もフォローさせて頂きますね。
冒頭の絵画が、アンリー・ルソーの作品とは初めて知りました。ありがとうございます。私は、ブリューゲルの絵だと思ってました😭。
「チェーホフの銃」は、存じております。私は、拡大解釈??して「すべての物事には必ず理由がある、そこをよく考えて営業活動して下さい」といつも部下に言っています😅。
前半に出できた銃は、出した理由があるわけだから、中盤や終盤で何らかの意味あいがあるかも?ということかも…。
その意味合いは、理にかなっている場合とそうでない場合があるかもしれませんね。ただ単に「この銃は格好良いし、私(監督や演出家など)は、この銃お気に入りだからこのシーンで使ってみたい」ということかもしれませんね。(←これも理由のひとつだと思っています)
映画を観ていて、たまに「このシーン何か意味あるのかしら?」と思うことが有りますが、そのシーンの意味合いを理解できていない鑑賞者の自分がいることもありますし、ヒッチコック作品のように自分(ヒッチコック自身)を登場させているお遊び的なシーンがあるのも作品の面白さかもしれませんね...ラスト近くのナイトフラワーが、日中に咲いているシーンは、きっと深い意味合い(理由)があるかもしれません...長々と失礼致しました。

月光仮面
ファジ吉さんのコメント
2025年12月17日

「チェーホフの銃」初めて知りました。ひなさんのおかげでこれから出会う作品はちゃんと意識できそうです。かなり嬉しいです。ご教授超絶感謝です!もし今回も意識できてたとしても冒頭の絵画とか知らないので、、大変ガクをどっかで補いたいですよ、、ひなさん何者でしょう?凄いです。これからも色々教えてください!

ファジ吉
かざままさんのコメント
2025年12月17日

共感&コメントありがとうございました。
なるほどですね~冒頭絵画から深い意味があったんですね。
美術知識がないので冒頭シ―ンは全く気になっていませんでした。
ひなさんのレビューを元にもう1回鑑賞したくなりました。
わかりやすい説明ありがとうございました〜スッキリしました。

かざまま
ねもちゃんさんのコメント
2025年12月17日

共感コメントおまけにフォローまでありがとうございます
恥ずかしながら絵画や演劇の知識は乏しく冒頭の絵画に目さえ行かないミーハー映画ファンの私ですがこれからひなさんのレビューから多々学べるを楽しみにしております
…渋谷龍太さん圧倒的な存在感でしたね!

ねもちゃん
Freddie3vさんのコメント
2025年12月17日

ひなさま

「舞台に登場した銃は必ず発射されなければならない」−−演劇は限られた制約の多い空間で演じられますから、登場する事物ひとつひとつの意味が非常に大きいことからできた名言だと思います。映画では(これを逆手にとって)登場した銃が一回も発射されずに不穏な余韻を残して終わるなんてことも考えられますし、意図的に意味の軽い事物をそこかしこに配置してゆくなんてこともできそうです。テレビのような即物的なメディアと違い、映画は観客の想像力の中にいるようなメディアだと思っています。観客ひとりひとりの中にそれぞれの一本がある–−私のプロフィール欄にある文章はそんな精神のもと書いたつもりです

Freddie3v
ノブ様さんのコメント
2025年12月16日

今晩は!
点数がなかった謎がとけました!
そういう事だったんですね!
この作品は通り過ぎできないですよね!

ノブ様
アプソさんのコメント
2025年12月16日

ひなさん
コメントありがとうございます!チェーホフの銃知りませんでしたが、スナックのトイレの絵、気になってました。そうか意味があったのですねー☺️

アプソ
ふわりさんのコメント
2025年12月16日

ひなさん、ありがとうございます!

ふわり
Freddie3vさんのコメント
2025年12月16日

コメントありがとうございます。確かに最初のシーン、気になりますよね。トイレで腰かけたまま、眠りこけている夏希。壁にはアンリ•ルソー。夢にうなされた夏希は寝言で叫びます「小太郎、行ったらあかん」このセリフはラストの皆で笑い合ってるシーン直前のセリフと同一です。ちょっとした円環構造になっているのではないかなと思っています。すなわち、最初のシーンではこのセリフとともに夢から醒め、そこからは言わば「映画内現実」(リアリティに欠けているところはあるけど)。最後はこのセリフが映画内現実の最後のセリフでそれ以降は(たぶんヤクの影響下にある)夏希の夢。今のところ、私はそう解釈していますが、再鑑賞したら、別の解釈になるかも

Freddie3v
ひでちゃぴんさんのコメント
2025年12月16日

ひなさん、博学でいらっしゃいますね。絵画の意味合いについて勉強になりました。ありがとうございます。

ひでちゃぴん
やまちょうさんのコメント
2025年12月16日

ひな様、共感とコメントいただき有難うございます!
あなた様のレビューのお言葉を拝借させていただいてこの作品の批評をするなら、「小さな嘘」が悉く人を騙そうとするような「小さな悪意」を孕んでおり、その積み重ねに強い嫌悪感を抱いてしまう・・・という感じでしょうか。
出演者の演技は凄く良い形になっていただけに、なにかとても残念な作品となったと思います。私も胸糞悪いので二度と鑑賞しません!

やまちょう
グレシャムの法則さんのコメント
2025年12月16日

ひなさん、私はチェーホフ、読んだことないのですが、銃の話は村上春樹さんの小説の中で知りました。
私の拙い記憶では、
『物語の前半に出てきた銃は、使われなければならない』
というふうに紹介されていたように覚えてます。
伏線の回収とは別の意味で、語り手のマナーというか読者、鑑賞者への礼儀作法のひとつなのかもしれないですね。なるほど。

グレシャムの法則
あんちゃんさんのコメント
2025年12月16日

共感とコメントありがとうございます。アンリ=ルソーの夢(「La Rêve」)ですが、フランス語のレーブは日本語や英語と同じく、就寝中に見るものと、将来に向かってこうあって欲しいと望む姿、の二つの意味があります。
この映画は、夏希やその子供たち、多摩恵や海たちの夢と挫折を描いたものなのでしょう。私が、この映画をノワールとしたのは、良いノワール作品は犯罪者の夢を描いたものであることが多いからです。それは例えば「太陽がいっぱい」を思い浮かべていただければ。
この映画では夏希が「子供たちに夢見せてやりたいんや」と絶叫するところが望みの強さの反面、多分、それは叶わないだろうとの予感がして痛切でした。

あんちゃん
ファランドルさんのコメント
2025年12月16日

トイレの絵、まったく、絵がかかっていたことすら、気付きませんでした。そうですか。
この映画も悪くはないですが、貧困を描いたものとしては「愚か者の身分」のほうが、はるかに上だと、わたし的には、評価しています。

ファランドル
Mr.C.B.2さんのコメント
2025年12月16日

共感どうもです。
対象外のレビューは「正体」以来ですかね。
感想は人それぞれなので自由だと思います。私はレビューに書いた理由でグッドエンドで良いんじゃない派ですが。

Mr.C.B.2
おつろくさんのコメント
2025年12月16日

共感ありがとうございます!

>冒頭のシーン。スナックのトイレの壁に飾られた、アンリ・ルソーの『夢』という名の絵画

自分は美術学校出ているのに、そんな重要な部分に気が付きませんでした。恥ずかしい・・・ 同じく闇の世界を描いている事で「愚か者の身分」と比べてしまいますが、レビューを読んでいると観客の7割はハッピーエンドを望んでいるみたいですね。

自分も森田望智には河合優実と同じ空気感を感じていました。二人とも与えられた役に全力で突っ込んでいく稀有な存在の女優なので、報知映画賞の受賞を元に、これからも観客を大いに泣かせたり笑わせたりして欲しいです。

おつろく
ふわりさんのコメント
2025年12月16日

こんにちは。ホントだ、同じ日に鑑賞されてたのですね。
心がない?いえいえ、そんなことないと思いますよ。
今回対象外でもレビューされたのですね。
嬉しいです。「愚か者の身分」も見たくなってきましたよ。

ふわり
トミーさんのコメント
2025年12月16日

共感ありがとうございます。
現在、どんなに貧困でもスマホを持ち風呂に入るってのは解る気がします。それをしないとコミュニティから完全に弾き出されてしまうから。娘の給食みたいなケースも起こり得ますけど。
愚か者の涙との違いは、手を染めていく者と抜け出ようとする者の違いですかね。

トミー
グレシャムの法則さんのコメント
2025年12月16日

白い星⭐︎✖️5は敢えて評価対象外とした、ということでしょうか。

残念だけど嫌いではない(好き)。
だけど結構ムリがあり、気持ちは離れてしまった。
そんな感じの自分が、作品を点数で評価するのは、おこがましいのではないか。
という感じの奥ゆかしさと謙虚さのなせるワザなのだと解釈しました。
全然違ってますか???

グレシャムの法則
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