「みんな、貧乏のせい。お母さんはちっとも悪くない」ナイトフラワー ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)
みんな、貧乏のせい。お母さんはちっとも悪くない
同監督による
〔ミッドナイトスワン(2020年)〕に続く「夜」の物語りだと言う。
良く判らぬカテゴライズだが、
何れも生き辛さを抱えた人間を題に取っているのは共通。
『夏希(北川景子)』は二人の子供のシングルマザー。
失踪した夫の借金を背負わされ、
幾つもの仕事を掛け持ちし独楽鼠のように働くが、
暮らしは一向に楽にならない。
福祉事務所に生活保護費の前借を頼むほど困窮した挙句、
廃棄された弁当にも手を出してしまう。
が、仕事帰りの夜の街で、
ひょんなことから入手した違法ドラッグを
組織を通さずに売りさばこうとする。
一方に格闘家の『多摩恵(森田望智)』が居る。
幼い頃から地元の蒲田で育った彼女だが、両親はいない。
試合のファイトマネーだけでは食べて行けず、
風俗嬢としても働いている。
二人は夜の街で出会い、
『多摩恵』の幼馴染を通して組織に渡りをつけ、
ドラッグの売買に手を染める。
『夏希』は子供の将来に希望を持たせるため、
『多摩恵』は所属するジムを存続させるため、
危ない橋を渡ってでも自由になる金が必要だった。
共に自分たちのことで頭がいっぱいの彼女等は、
ドラッグを常用することで身を持ち崩す人間の存在など、
頭の片隅にも無い。
多くのシングルマザーが陥っている、
絵に描いたような極貧生活は、ひとえに社会の問題。
両親を無くした子供が嵌る貧困も同様ながら、
共に具体的な救済策が示されていないのがもどかしい。
とは言え、その解決として、
犯罪行為に手を染める展開は、
ドラマチックながら直截的に過ぎる印象。
これが「匿名・流動型犯罪」だったら、
我々の目にはどのように映ったか。
世間に対する意趣返しの側面はありつつ、
随分と安直に見えてしまう。
とりわけ最後のシーンでは、
救済とはなにかを考えさせられ。
救われた家族の陰には、
救われなかった家族が存在するのだ。
『北川景子』が良い。
〔スマホを落としただけなのに(2018年)〕ではただ叫ぶだけ、
〔ラーゲリより愛を込めて(2022年)〕では綺麗に泣くだけだったのが、
本作ではきっちり汚れを演じている。
今年のNHKの朝の連ドラ〔ばけばけ〕の『雨清水タエ』役も同様、
一皮むけた感がある。
もとより『森田望智』の素晴らしさは論を待たず。
格闘家らしい体型に肉体を改造。
計量後のポージング時に、盛り上がる両腕の上腕二頭筋は
ほれぼれするほど。
がさつな歩き方、行儀の悪い食事作法も板についている。
絶妙なキャスティングだ。
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