「強烈なパンチを食らう」ナイトフラワー 泣き虫オヤジさんの映画レビュー(感想・評価)
強烈なパンチを食らう
今や「美女と言えば北川景子」というのが国民の共通認識になってしまった感がある。俺もまさに国宝級と思っているので、観ない選択肢は無かった。
【物語】
永島夏希(北川景子)は小学生の娘と保育園に通わせる息子と東京で暮らすシングルマザー。逃げた元夫が作った借金に追われ、昼夜休みなく働いているが、生活は困窮し、食べることさえままならない。娘はバイオリンの才能があるらしく、本人も本格的に習うことを希望しているが、このままでは到底希望を叶えてやることはできない。
そんなとき、夜の街でドラッグの密売現場を遭遇する。稼ぎを増やすためにドラッグの売人になろうとする彼女の前に、夜の街で日銭を稼ぎながら格闘家として這い上がろうとしている芳井多摩恵(森田望智)が現れる。 彼女がボディーガードとしてコンビを組み、ドラッグ密売の闇世界に足を踏み入れる。
多摩恵は子供達とも親しくなり、彼女たちの前に道が開けたように思えたが・・・
【感想】
かなりへヴィーな作品だった。
社会の底辺を生きながらも、諦めることなく、そして手段を選ばず必死に前に進もうとする夏希と多摩恵。 しかし、今にも壊れてしまいそうな二人から軋む音が聞こえて来るようだ。観る側にも覚悟が必要な作品。
夏希は怠け者というわけではなく懸命に働いているわけで、借金さえなければ闇社会に足を突っ込む必要は無かったであろう。しかも借金は自分が作ったわけではないというところが救いの無さ。
犯罪と子供の夢を天秤にかけ、闇社会に進んでしまう夏希。 しかしどうだろう、罪を犯さず子供を餓死させるよりは「ものを盗んで食わせる」方が親としてとるべき行動かも知れないが、「夢」は???
最近観たCMで「子供の習い事のためにカードローン」というのが有って、「一時しのぎの借金で子供の夢を叶えようなんていうのはアホだ」と思って観ていた俺なので、違うかなと。 ただ、夏希と多摩恵は自分の不遇を他人や社会の性にすることなく、自分で道を切り拓こうとする姿には痛々しくも心に刺さるものはあった。
役者について。まず、元々の鑑賞目的の北川景子については、
初日舞台あいさつライブビューイング付き上映回で観たのだが、舞台挨拶では(会場の後方席の人まで届くようにという配慮か)“くっきりメイク”だった。この姿は正直言って「あれ?」という感じだった。一方、作品中は極貧生活でろくに化粧なんてしていない設定なので化粧っ気の無いナチュラルメイク。こちらの方がずっと美しく、何度かストーリーはほっといてその美しい造形に見惚れてしまった。
とりあえず、観賞料金はそれだけで回収できた(笑)
しかし、北川以上に強烈な印象を残したのは森田望智。格闘家が様になり過ぎていた。運動神経とか、武術の経験とか、元々素養が有ったのか無かったのかも知らないが、相当の準備のトレーニングを積んだと思われる。 白々しさが皆無でホントの“格闘家”に見える動きが凄い。それだからこそ終盤の大事な試合シーンで、見続けるのが苦しくなるほどの迫力を生んだ。 また、格闘シーンだけでなく、恵まれない境遇で育った多摩恵を体現する“品の無さ”が完璧。その言動、所作には“育ちの悪さ”が滲み出ていた。体を張ったこの役作りは今年の最優秀助演女優もの。本作を観て、最近発表された“朝ドラヒロイン”にも妙に納得してしまった。
作品的には少なくとも楽しくないし、ハッピーエンドでもないし、観賞後に明るい気持ちになれる結末でもないし、ましてや“ほっこり”する作品ではない。 心地良さを味わえないという点で俺はちょっと好きになれないが、北川景子と森田望智を観るだけでも十分価値のある作品。
【蛇足】
席について上映開始前に周囲を見回して驚ろいたことが一つ。当然北川景子ファンが多いと思うのだが、女性ばかり。9割を超えていたと思う。以前に男性アイドル主演作品で似たような経験はあるが、女優主演の作品では初めてだと思う。北川景子は女性の支持も高いとは思ってはいたが、ここまでか! と驚いた。 同性の人気が高いというのは、きっと末永く人気が続くのだろうと思ったのでした。
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