「〝自業自得〟で突き放す日本社会の冷たさ」ナイトフラワー グレシャムの法則さんの映画レビュー(感想・評価)
〝自業自得〟で突き放す日本社会の冷たさ
愛のある家族か、愛のない家族か。
お金のある家族か、お金のない家族か。
母親に愛を感じることができたか、できなかったか。
生きる目的を人生に見い出せるか、見い出せないのか。
それぞれを単純な二項対立で考えることができれば、世の中は比較的分かりやすいし、ある種の諦めもつく。
ところが、「愛はあるけどお金はない家族」とか「お金はあるけど愛はない家族」のように対立軸をふたつクロスさせただけで、どちらを選択するにしても、正しいとか誤りだ、などと明確に答えが出せない複雑な命題となる。
自分が幸福になるために、犯罪に手を染めてもいいのか、悪いのか。
もし、他人を巻き込まない犯罪なら、許されるのか、許されないのか。
自分が幸福になるために、他人を不幸にしてもいいのか、悪いのか。
人生の選択が、いつも単純な二項対立から選ぶことで済むのであれば、ほとんどの場合、それほど悩まないし、映画や小説もこんなに多種多様に創造されなかったと思う。
問題が複雑化した中での選択は、二項対立だけであれば優先されるはずの何か(たとえば、家族の命、社会を守るための倫理や道徳)を〝切り捨てなければならない〟ということでもある。
映画や小説の主人公は、多くの場合、ラストシーンやクライマックスの場面で、他者から見れば不合理としか思えない選択をすることで観客の心に響き、深い感動や涙を誘うことになる。
内田英治監督は、思わせぶりな演出を多用することで、登場人物たちの選択を明示しない。
あの半グレのリーダーが、夏希と多摩恵を処分したのか見逃したのか。
あの発砲音が小春に向けたものなのか、自分に向けたものなのか。
(そうであって欲しい現実だったのか、妄想だったのか)
どちらにも解釈できるような〝思わせぶりな演出〟は自身の解釈を明示しない監督の逃げの姿勢なのか、或いはあなたならどう受け取る?という鑑賞者への挑戦なのか。
内田英治監督の意図なのかどうかは分からないが、この映画で不穏な点があるとすれば、主要な登場人物の多くについて、〝自業自得〟なのかもしれない、と思わされるような背景があることだ。
ドラッグに溺れた女子大生だってそうだし、主役の2人だってそうだ。不幸な結末は予想できるのに、そちら側に足を踏み入れてしまった人には、この世界は容赦がない。日本の社会や世間といわれる大衆の中には、人の不幸を不運ではなく自分のせいでしょう、と突き放す冷たい側面がある。この映画にはそれをあぶり出す効果もあるから、なんだか居心地の悪さを覚えることになるのだと思う。
なんだかんだ言っても、内田英治監督が曲者であることは間違いないですね。
グレシャムの法則さま
ちなみに演劇の「チェーホフの銃」ってご存知ですか?「舞台の前半に登場した小道具は、後半で意味を持たなければいけない」
アンリ・ルソーの『夢』は実物を見たことがあって、好きな絵ではないし、スナックのトイレの壁には不似合いなので、ラストまでずっと気になってしまいました🫡
グレシャムの法則さま
共感とコメント、ありがとうございます🙂
私の気持ちを最大限美しく表現していただくなら、グレシャムさんの解釈通り、「奥ゆかしさと謙虚さのなせるワザ」です(笑)
私の★評価は「もう1回観たい」かどうかなので、★5つか☆ゼロかの2択で、キホン★5つしかレビューアップしてないんです。
>この映画にはそれをあぶり出す効果もあるから、なんだか居心地の悪さを覚えることになるのだと思う。
この映画はレビューを書くつもりはなかったのに、通り過ぎることが出来なくて、心の無いレビューを書いたので居心地が悪いです🤭
人の不幸を不運ではなく自分のせいでしょと突き放す側面。。
私にもあります。
グレシャムの法則さんのレビューはいつも、再び作品に向き合って、掘り下げて考えるヒントをくれるレビューですが、今回も色々な宿題をもらった気持ちです。
心が痛い。。ですが、作品を振り返りながら又、大掃除の続き、窓拭き頑張ります♪
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