「おっかない」俺ではない炎上 ブレミンガーさんの映画レビュー(感想・評価)
おっかない
阿部寛さん今年3本目の主演映画ですが、前2本が正直アレな出来だったので、今作はなんとか面白くあってくれ…!と願いながらの鑑賞。
めちゃんこ面白かったです。
SNS社会への警鐘を難しくならないレベルで盛り込みつつ、阿部寛さんにしかできないであろう役柄にマッチしたブラックコメディも面白く、噛み合わせがベストマッチで最高でした。
身に覚えのない炎上に振り回される男の逃走劇を描くといったシンプルな道筋ながら、阿部寛さんの存在感が物語をグングン引っ張ってくれるのが素晴らしく、SNS嫌いの頑固親父がSNSに振り回されていくという巧みな進み方も良かったです。
自己評価が高いが故に周りが見えておらず、予想以上に悪評を買っていたというのを知り、目的地などを目指せばいいのに思わずエゴサーチしてしまうくらい自分の評価に取り憑かれてしまっているのもリアルだなーと思いました。
予告編が個人的には良いミスリードになっていたなと思いました。
芦田愛菜さんが諸悪の根源だろ!って言っていたセリフはあくまで阿部寛さんに向けて言っていたと思っていたんですが、時系列を少しずつ歪めながらの展開で騙し騙されをしてくれるのでずっと驚きっぱなしでした。
中盤で犯人はあの人だなと察しはできますが、それまではわりかし分からない展開が多くて楽しめます。
数字を持ってる一般人が迂闊にリツイートしてしまったがためにどんどん拡散していくSNSのスピードの怖さが伝わってきますし、中盤までは誰1人自分は悪くないと言い張っているのも防衛本能そのものだなと思いました。
自分もSNSはやっていますが基本的に見る専門なので、いちいち芸能人につっかかっていったり、根拠のない情報を拡散しまくったり、迷惑系みたいな行動をする奴らの気持ちはまるで分かりませんし、それが嘘だったとしても匿名なら手のひらクルックルしてしまえば無事逃げ切れるので匿名って便利であり凶器でもあるなと改めて思いました(レビューサイトも似たようなものですが)。
阿部寛さんという存在感があったからこそ今作の説得力がグッと上がったなと思いました。
まずデカいところで威圧感があって素晴らしいですし、本人にSNSのイメージが全く無い(読み込み爆速のHPのイメージは強い)のも今作にベストマッチですし、SNSの標的にされたら一発でバレてしまうビジュアルというところもお見事な組み合わせでした。
身を隠すのも大変であろう巨体を隠しながら進行していくルートは大変ですし、予告で何故か崖を下っていたなと思ったら本当に下りていて、しかもバキバキの肉体にパンイチという強すぎる絵面は真剣なシーンのはずなのに笑えてしまうのが不思議で仕方なかったです。
終盤の展開で否応なしにSNSという文化を否定するではなく、本来楽しむものであるという事を発言してくれたり、序盤のセリフとは全く逆の自分が悪かったという反省で家族が繋がるというのもお見事だったなと思いました。
最後まで悪びれずに自分本位で自分は悪くないと言っていた刑事の方にも問題があるのでは?とも思えるラストは皮肉ありありでした。
ラストの1文も反省しているのかしてないのか分からない絶妙な塩梅で良いなと思いました。
都合の良さを感じる展開はありましたが、それを加味しても面白いエンタメ作品になっていたなと思いました。
阿部寛さんは強い、という事を再確認できる作品でした。
鑑賞日 10/1
鑑賞時間 13:40〜16:00
